がちゃS・ぷち

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No.2281
作者:海風
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2007-05-24 02:20:01
萌えた:4
笑った:6
感動だ:29

『何かそういう感じです』


ルルニャン女学園シリーズ 9話

 【No:2235】 → 【No:2240】 → 【No:2241】 → 【No:2243】 → 【No:2244】
 → 【No:2251】 → 【No:2265】 → 【No:2274】 → 終 ここ → おまけ【No:2288】

一話ずつが長いので注意してください。







 由乃ちゃんが「猫耳イェーーーー!!」と声高らかに熱く叫んでいた、その頃。

「あはは、負けちゃいました」

 私の妹は、笑顔で私の前に居た。



「お――」
「惜しかったな」

 私が声を掛ける前に、彼女の実の弟が言った。
 ……祐麒さんって意外と間が悪いわね。

「うん。まあ、私的にはこんなものなんじゃないかなと」
「な――」
「何言ってるんですかお姉さま!?」

 私が声を掛ける前に、一緒に来た彼女の妹が言った。
 ……瞳子ちゃんも意外と間が悪いのね。

「前回優勝者が一回戦負けですよ!? なんでへらへら笑ってるんですか!? 悔しくないんですか!?」
「もう十分楽しんだから。志摩子さんには悪いかも知れないけど、前回決勝戦よりさっきの勝負の方が楽しかったよ」

 自分が最高だと思って組んだブックが聖さまとそっくりだったこと、自分が考えていた戦法と聖さまが選んだ戦法がそっくりだったこと、あと一歩下がれば負けるというスレスレのボーダーラインで踏み止まり読み合いになったこと――
 そして何より、聖さまを何度も焦らせたこと。
 それら全てをひっくるめて、祐巳は「満足した」と笑う。
 そう、祐巳は負けたけれど、もしかしたら誰よりもゲームを楽しんだから。それだけ取れば勝者は祐巳だ。
 楽しむために企画した大会、楽しむために開発したカード。
 悔いが残らない勝負ができたのなら、私も姉としてそれだけで満足だ。

「……相変わらずお気楽ですこと」
「瞳子ちゃんは楽しめなかったの?」
「私はまだメインブック使ってませんでしたから!」

 由乃ちゃん相手なら勝てると踏んで選んだブックは、予想に反してあっさり負けてしまったのだから、瞳子ちゃんがヒステリックに怒るのもわからないでもない。
 そう言えばさっき由乃ちゃんが使ったブックって、かつて見た一直線という感じと違って捻りが利いていたものね。

「ま――」
「まあ落ち着きなよ。ほら、祐巳ちゃんも瞳子も座って」

 私が声を掛ける前に、従兄妹の優さんが言った。
 ……まあ、優さんが間が悪いのは薄々勘付いていたけれど。彼の場合は故意の時もあるし。
 祐巳は素直に「はい」とうなずき、まだまだ悔しさが納まらない瞳子ちゃんは渋々という顔で座る。アリスが「残念だったね」と声を掛けた。
 私達用に特別に用意された貴賓席(と言っても一般生徒達から少し隔離された程度のもの)は十席ほど。大型モニターに対してUの字に席が設けられている。後から来た本戦敗退者が席取りなどで苦労するだろうから、という配慮で、敗者はここに座ることができるというルールがある。
 もちろん薔薇の館に残ってその場で観戦してもいいそうだが、祐巳達はスタッフの邪魔になりそうだから出てきたのだろう。菜々ちゃんは残っているのかしら?

「本当にリリアンはレベル高いのね。ユキチから少し聞いてたんだけど、さっきから驚いてばっかり」

 アリスは楽しげにウサ耳を揺らしながら、祐巳と瞳子ちゃんに話し掛ける。

「レベルが高い? そうなの?」
「花寺じゃまだ浸透し始めてる段階だからな。連鎖だってブックだって特殊能力の使い方だって甘いよ。黄薔薇系譜が横行してるから」
「黄薔薇系譜が横行……ああ、リリアンでも最初の内はそうでしたわね」
「そうだったね。誰でも基本から入るみたい。あ、志摩子さんは最初から白薔薇使ってたっけ」
「あの方はいつも勝敗より楽しむ方を優先してますものね」

 勝敗にこだわらないのは志摩子らしいと思うが。
 それにしても……
 私はいつしゃべったらいいのかしら?
 …………
 別にいつでもいいわよね?

「あ――」
「あのー」

 また邪魔が!! 皆なぜこうも間が悪いの!?
 一瞬「まさか私の間が悪いのか?」と思ったものの、そんなわけがないのでそのまま脳裏から忘却へと流しておいた。
 まさかこの私が間が悪いですって? そんなわけないじゃない! 私は妹を探しに会議室を飛び出した瞬間に妹に出会ったほど間が良いのだから!
 ……え? 聖さまと一緒にいるところを見て嫉妬して祐巳を泣かせた……? バレンタインイベントの直前に……?
 …………
 そんな些細なことは忘れたわ。あの時の思い出は祐巳がくれたチョコレートのことだけよ。

「何かな?」
「あ、は、はい」

 優さんがいつもの笑みを浮かべて、声を掛けて来た女生徒二人に問い掛ける。

「あの、ゲストからコメントをいただきたいんですが」
「よろしいでしょうか?」
「もちろん」

 さわやかに応えたところで、祐巳と瞳子ちゃんが「邪魔になるから」と席から少し離れた。
 現れたのは、恐らくインタビュアーなのだろうマイクを握る生徒二人と、テレビで見るような肩に担ぐタイプのカメラを構えたスタッフと、「写真部」の腕章を付けてフォトカメラを持った生徒。
 
「写真部です。コメントをいただいた後で、紅薔薇一家三人の写真を撮らせてください」

 やたらカードの「盗撮ガール」に似た女の子が、愛想よく笑って言った。



 インタビューの後に約束通り写真を一枚……ではなく数枚撮られて、私達はまた観戦客として席に着く。

「ねえ、さっちゃん。さっちゃんもカードやるのかい?」

 ひょいと投げられた優さんの言葉を受け取り、私もひょいと投げ返す。

「いいえ。開発段階で何度かやったけれど、それ以降は二回だけしかやっていないわね」
「二回?」
「私にだって色々付き合いがあるんですから」
「ふうん……」

 その二回は、祐巳とのデート権を掛けたおばあちゃんと孫の真剣勝負だ。もちろんどちらも勝ったわ。

「僕に少し教えてくれないか?」
「さっきの、本気だったの?」

 てっきりリップサービスだと思っていたけれど、優さんは先程の「今度チャレンジしてみるよ」を実践するつもりらしい。

「祐麒さんに教えていただいたら? 噂によると祐巳より強いみたいよ?」
「だから聞けないんじゃないか。OBとして後輩に塩を貰うのは嫌だ」
「意外と見栄っぱりね」
「小笠原の血も少しだけ流れているからね」

 なるほど。見栄っぱりの負けず嫌いは私もそうだし、その遺伝は継いでいるのか。確かに聖さまと言い合いになった時なんかは、柏木優という人物を知る者からすれば予想外にムキになるから、本当に遺伝子レベルで継いでいるのかも知れない。

「内緒話ですか?」

 笑顔で入ってきたのは、祐巳だった。向こうは祐麒さんとアリスと瞳子ちゃん、そしてさっき写真を撮った実行委員のカメラマンが四人で盛り上がっている。なんの話をしているんだろう?

「あ、祐巳ちゃんでもいいかな? カードを教えてくれない?」
「いいですよ」

 いつぞやは険悪に見えたものだが、色々あったせいか祐巳と優さんは実の兄妹のように仲が良い。
 たぶん私と一緒で、彼を見る目が変わった……というよりは、少し大人になったのかも知れない。もちろん本人同士の気が合う、というのもあるのだろうけれど。
 そう、私と祐巳のように、気が合うのだろう。

「夏休みの前半なら時間ありますけど」
「僕の方はいつでも。うちに来るかい?」
「そうですね、落ち着く場所がいいかも。またメイプルパーラーのゼリーを持ってお邪魔しますね」

 また? 過去に何かあったのだろうか。

「それにしても、大学って高校生より時間が自由に使えるみたいですね」

 それは優さんだけではなく、私や薔薇の館にいる仮面をつけたお姉さま方のことも指しているのだろう。

「まあね。あ、さっちゃんも一緒にどうだい?」
「時間があればね。予定が決まったら教えてちょうだい。でも瞳子ちゃんにも声を掛けておかないと、あとで怒られるわよ」
「そうだね。瞳子は祐巳ちゃんが大好きだから」

 その台詞に祐巳は「いやーそんなーあははー」と照れる。
 ……まあ、祐巳が私から離れるのは仕方ない。そして学生生活で密着できる妹を可愛く思うのも仕方がない。
 だが、瞳子ちゃんのことを考えて顔が緩む祐巳を見ていると、自分のことを思い出してしまう。
 果たして私は、姉としてちゃんと祐巳を可愛がってあげることができたのだろうか。
 私が祐巳の行為で嬉しかったことは沢山あった。
 だが、逆は?
 祐巳は素直すぎるから、私の言動を受け止めた心がそのまま表に出てくる。私のせいで泣かせた数は多いし、私のせいで苦労したことも数え切れないほどあるはずだ。
 自分は理想的な姉だった――なんて言うことなどできないけれど。
 しかし断言できそうなのは、祐巳が望むことには半分も応えられなかった姉だっただろう……と。約束は反故にするわ危うく別れそうになったわジェットコースターには乗らないわ私の気分が悪くなってデートは中途半端に終わったわ。これは一番印象強い時期のことで、探さなくてももっともっと色々あった。語り出したら切りがないほどに。
 もっと妹を大切にするべきだった。かけがいのない時間の中、お互いもっと笑って過ごしていたかった。
 祐巳と瞳子ちゃんが並んで素直に微笑む姿を見ると、どうしても過去のことを考えてしまう。二人でいることが客観的にあんなに幸せそうに見えたことが、私と祐巳にはあったのか。
 ……などと考えても、これからはともかく、これまではどうしようもないのに。

「――やっぱり祐巳ちゃんのカードは外せないさ」
「…!」

 優さんの言葉にハッとした。

「あはは、またまた。ちゃんと組み合わせを考えないとダメですよ」

 …………
 考えたくもない恐るべき思考が出来上がってしまった。
 確信したくはないが……だが今更引き返すことなど考えられず、私は二人からちょっと離れてみる。

「知ってる? 瞳子って髪を降ろすと意外と――」
「い、意外と? 意外となんですか?」
「これ以上は言えないなぁ」
「あー、ずるい! 言いかけたんだからちゃんと教えてくださいよ!」
「ははは……ちょ、ちょっと揺らしすぎじゃ……あ、首が……首が今グキッて……!」

 ……愕然とした。
 なんてことだ。
 なんなんだ。
 どういうことだ。
 瞳子ちゃんならいい。妹だし、まだいい。
 でも、なんで。
 どうして優さんと祐巳がものすごく仲良さげに、それこそ私と一緒にいる時以上に楽しそうに見えるのよ!! 私だって祐巳に激しく揺らされたことなんてないのに!!

「祐巳!!」
「は、はい!」
「揺らしたいなら優さんじゃなくて私を揺らしなさい!」
「……え?」



「――はい! なぜか貴賓席で姉を揺らしている紅薔薇さまを見ながら、二回戦開始です!」

 わぁーーーー!!

「祥子さまの力なく垂れた首が心配ですが、というか髪が顔に掛かって貞○チックで非常に怖いですが、進行は予定通り進めます」

 …………
 ……はっ!?
 ちょっ……ちょっとだけ意識を失っていたわ……

「おおお、お姉さま、大丈夫ですか!?」

 心配げな顔の祐巳がいた。
 ……首が痛い。髪がバサバサだ。よだれ垂れてる。

「……あなた、やりすぎよ」
「えっ? お、お姉さまがやれって言うから……激しくやれって言うから……」
「限度があるでしょう? まったく祐巳は……三年生になっても落ち着きがないんだから。あなたを支える瞳子ちゃんの苦労がうかがえるわね」
「す……すみません……」

 …………
 これだ! 過去を後悔しても何も変わってないじゃない、私!

「ククク……いや、失敬。さっちゃんは相変わらず感情のコントロールが下手だね」
「余計なお世話です!」

 優さんのくせに祐巳と仲良さげにしているのが原因なんじゃない! 首痛いし!

「はは、怖い怖い。祐巳ちゃんこっちにおいで。お姉さまには冷却時間が必要みたいだ」
「……」

 確かにその通りだったので、祐巳に「行きなさい」と手を振る。祐巳はしおれたまま優さんの反対隣の席に着いた。

「君は本当に不器用だね」
「……あなたにだけは意地でも負けませんからね」

 瞳子ちゃんに負けるのはいい。由乃ちゃんや志摩子に負けるのも、まあ、同級生という土俵にいるのだからまだ大丈夫だ。畑違いだ。
 だが優さんにだけは絶対に負けない。負けられない。
 こんなに憎らしく思えるのは、「男が好き」と嘘の告白をされた時以来だ。いや、あの時よりも憎悪は深い気がする。
 睨む私を余裕の笑みで受け流し、優さんは向こうへ顔を向ける。

「おい、ユキチ。また説明してくれよ」
「はいはい……あ、なんで祐巳があんたの隣に座ってるんだよ」
「僕の魅力のせいかな?」
「……あんた水分補給してるか? 暑いから注意した方がいいぜ。なんなら水貰ってくるけど、本当に大丈夫か? 歩けるか? 実行委員に言ってタンカ持ってきてもらおうか?」
「…………」

 憎まれ口じゃなくて真面目に心配する後輩に、優さんは苦笑するしかなかった。いい気味だ。ナイス祐麒さん。
 そんなこんなで、二回戦第一試合が始まった。
 対戦者同士の説明は聞き逃してしまったけれど、モニターを見るとちょうどゲームがスタートするところだった。



「――勝負あり! 勝者白薔薇さま!」

 わぁーーーー!!

 すぐ横の一般席から怒号のような声が上がる。やはり現役薔薇さまの人気はかなりのものだ。……しかしなぜ可南子ちゃんは猫耳を付けているのかしら? 趣味?
 続く第二試合は、田沼ちさとさん対白薔薇仮面――聖さまだ。ちなみに貴賓席の皆には仮面のお二方の正体は知らされており、その上で緘口令を要求されている。

「――勝者白薔薇仮面!」

 大した問題もなく順調に勝負は進み、

「――勝者、黄薔薇さま!」

 早々にベスト4が選出された。

「なお紅薔薇仮面はシード枠にいるので、第二試合はありません! あしからず!」



 駆け抜けるようにこなされた試合の後、5分間の休憩が取られ、そこかしこから緊張を緩める大きな溜息がこぼれた。

「由乃さんのブック強いなぁ……」

 すぐに復活した(我ながら不本意だが慣れているのだろう)祐巳は、うーんと難しい顔で腕を組む。

「ちょっと意外ですわね。てっきり乃梨子が勝つと思ったんですが」
「由乃さんには悪いけど、私もそう思ってた」
「というか、ここぞって時に鬼のような引きの良さを見せるな……すごいな由乃さん」
「ね。特に山の最後の一枚で令さま引いちゃうんだもんね」

 祐巳達が言うのも当然で、ついさっき行われた第三試合は本当に白熱していた。
 お互いがギリギリまで消耗し、もうまともに戦えるカードがないという状況下、皆が引き分けを考えていた最後の最後で由乃ちゃんは令を引いたのだ。
 
「由乃さん、ここぞって時は本当に強いんだよね。カードに限らず」

 そう言えば祐巳に聞いた話によると、ここぞというギリギリで妹(当時は候補)を見つけ出し、「紹介する」と約束していた江利子さまに顔を見せることができたとか。
 心臓の手術だってそうだし、黄薔薇革命の時の令との復縁だってそうだし、なんというか、由乃ちゃんは崖っぷちに強いのだろう。

「……出版社に乗り込んで運良く春日さんに会えたりね……本当にここぞって時はすごいんだよね……」

 出版社? ……あ、「いばらの森」の時か。
 私達も知らないところで、由乃ちゃんは数々の引きの良さ、あるいは奇跡を起こしているかも知れない。そういう安定しない星の下に生まれてきたのかも知れない。
 それは令も苦労するというものだ。同情するわ。

「その引きの良さで蓉子さまに勝てたら、もっとすごいですわね」
「そうだね」

 笑う祐巳だが、本人も含めて誰もが思っただろう。
 ――奇跡を起こせる由乃ちゃんなら、あるいは、と。



 休憩が終わり、ついに準決勝が始まる。

「さあ、残る試合はあとわずか! なんの因果か準決勝第一試合は白薔薇同士の対決となります!」

 観衆を煽るように、由乃ちゃんは握り拳を固めたりそれを振り上げたりしてオーバーアクションをこなす。マイクを持つ手の小指を立てて。

「それでは対戦前にコメントをいただきましょう! 志摩子さん、今どう!?」
「え? ど、どうと言われても……」

 志摩子は戸惑う。その聞き方では志摩子も返答に困るだろう。

「じゃあ調子は!?」
「悪くはないかと……」
「勝てそうですか!? 圧倒的勝利の予感をひしひしと感じますか!?」
「いえ、それはないです。ただやるからには勝ちたいし、楽しみたいです」
「そうですか! そうですね! 妹も草葉の陰から志摩子さんの勝利を願ってますよ!」
「草葉って……の、乃梨子は死んでませんっ」
「――はい、ありがとうございました!」

 珍しく志摩子が感情的になったところで、カメラはオペラ座の怪人のような仮面を付けた怪しい人物に向けられる。

「続いて白薔薇仮面にコメントをいただきます! 今朝は何を食べましたか!?」

 そんなこと聞いてどうする。……と思った者は多数いただろうけれど、白薔薇仮面・聖さまは躊躇なく応える。

「パンとコーヒーかな」
「へー、意外と普通なんですね!」
「そりゃ私も人だからね」

 それはそうだ。

「現白薔薇さまと対戦することになりましたが、心境などは!? 少しはやりづらいな、とか思いますか!?」
「特にないよ。白薔薇さまとは今後も遊びたいな、と思ってる」
「今後? プライベートで!?」
「そ。お互い自分の世界が広が」
「――はい、ありがとうございました!」
「……えー……」

 カメラが急展開された見えないところで、聖さまが扱いにか態度にか途中で切り上げられた不満にか、とにかく行き場のない声を漏らしていた。

「それでは準決勝第一試合、スターーーートぉぉ!!」



 志摩子はここまで勝ち抜いてきた紅黄の基本強化ブックを展開、対する聖さまは祐巳をやぶった三色……ではなく、またやり口の違う三色混合ブックで受けて立つ。
 聖さまのあの三色って……

「聖さん、白薔薇主体の三色だな」
「そうだね」
「それもかなりの攻撃型だ」
「うん。これは志摩子さんが不利かも」

 前回優勝者と、それより強い弟が真剣な顔でそんなやり取りをする。
 ――結果は二人の予想通りに終わった。

「勝負あり! 勝者白薔薇仮面!」

 おぉーーーー!!

 一般客席からどよめきが上がる中、由乃ちゃんは声を張り上げて勝者インタビューに臨む。

「結構すんなり勝負が決しましたね!?」
「そうだね、自分でも意外。ブックの相性が良かったかな」
「そう言えば、志摩子さんは今大会一度もブックの変更をしてなかったように見えましたが?」

 勝者だけかと思えば、負けた志摩子にもマイクが突きつけられる。

「はい。今までの経験の集大成として、誰と当たっても勝てるブックを編成したつもりでした。だから最初からこれ一本で行こうと思っていました」

 本人から語られた真相に、客席はまたどよめく。

「妙なこだわりですね?」
「祐巳さんだって前大会で紅一色の異色ブックを使っていたでしょう? 勝つために勝負するのもいいけれど、やっぱりゲームはゲームとして楽しむだけの遊び心がないといけないと思いまして」
「なるほど、遊び心ですか。今のコメント、白薔薇仮面はどう思いますか?」
「そういう意味じゃ、確かに私には余裕がなかったかもね。でも勝ったのは私」
「まったくその通りです! お二人とも、控え席でお待ちください!」

 ……あの志摩子が遊び心か。私が考える以上に、志摩子は乃梨子ちゃんを妹にしてから良い方向に変わっているようだ。

「続いて準決勝第二試合! わたくし島津由乃対紅薔薇仮面です! 恒例のようにここでメイン司会を真美さんにバトンタッチします! よろしくね!」
「了解しました――志摩子さん。付き合って」
「え? ええ、わかりました」

 控え席に消えていた志摩子が、新聞部長の真美さんの隣にフレームインしてきてマイクを受け取った。予想だにしなかった白薔薇さま登場に客席は盛り上がる。

「もしもの時は私達薔薇さまが、由乃さんか真美さんの代わりに司会をすることになってたんだ」
「そうなんだ。……で、おまえはいいのか?」
「司会はテーブルのすぐ側にいないといけないから、対戦者達の手札が見えちゃうこともあるのよ。だから私はダメって言われた」
「お姉さま、顔に出ますものね」
「もう即座にダメって言われた」
「祐巳は顔に出るもんな」
「反論の余地もなくダメって言われた」
「祐巳さんって顔に出るタイプだもんね」
「だ、誰か一人くらい『そんなことないよね』って言ってくれてもいいんじゃないのっ?」
「「…………」」

 祐巳の言葉には、誰もが無反応だった。
 まあ、そういうことらしい。志摩子が司会に呼ばれたのは突然の要求ではなく、最初から打ち合わせ済みの展開ということか。
 これだけの規模のイベントを二、三週間ほどで立ち上げた割には、大きな問題も淀みもなく進行するものだ。前回の教訓から大幅な改良を加えられたことがよくわかる。

「「それでは準決勝第二試合を始めてください」」

 志摩子と真美さんの落ち着いたスタートの声に合わせ、由乃ちゃんと私のお姉さまが動き出した。



  うぉぉぉぉぉ!!

 その時、乙女にあるまじき品のない声がリリアンに響き渡った。私の横からも上がっていたので、現山百合会メンバーから見てもすごいものだったらしい。

「勝負あり」
「勝者、島津由乃さん」

 こんな時でも落ち着いて、司会二人はジャッジを下した。

「まさか第1ターンで『隙なし73』を伏せて、祐巳ちゃん対策をしておくとは……」

 優さんが急に玄人みたいに唸り出す。あなたよく知らないんでしょう?

「更に黄薔薇系譜の攻撃反射で生き残った次ターンに、『六月の雨』で幹部カードを排除。ジ・エンドで邪魔なカードを退学にして、竹刀で攻撃力を上げて一撃必殺……」
「とんでもない荒業だな。祐巳を警戒するなら、普通は呼び出しを阻止するものだろうに。あんなやり方、敗北と紙一重だ」
「でも相手の予想を越えないと、当然警戒される」
「背水の陣?」
「というより、肉を切らせて骨を断つ?」

 福沢姉弟が最後の怒涛の反撃を冷静に分析している時、由乃ちゃんは志摩子からマイクを奪っていた。

「はい、私の勝ちです! 内容的には負けてましたけど一発逆転で私の勝ちです!」

  わぁーーーー!!

「紅薔薇仮面、敗北の二文字を刻まれた今の気持ちは!?」
「まさかああ来るとは思わなかったわ。あの反撃は私がカードを出す間がなかった。それが敗因でしょうね」
「私に負けるなんて微塵も思ってませんでした?」
「それはないわね。由乃ちゃんの引きの良さは今まで十分見てきたもの」

 笑みを浮かべてお姉さまは余裕でコメントする。だがきっとものすごく悔しがっていることだろう。私は妹だからわかるのだ。

「公約は忘れてませんね?」

 由乃ちゃんの言葉に、客席は水を打ったように一瞬にして静まり返った。
 最近の号外かわら版で読んだ記事によると、仮面の二人は「不敗の英雄」だの「薔薇さま方をも越える存在感」だの「仮面のお二人の素顔は?」だの、もう煽りっぱなしだった。
 当然、煽られれば煽られるほど、正体を知らない人達は期待する。そうじゃなくても、この数週間で薔薇さま方と並ぶほどの知名度と、人気だかなんだかを一身に浴びていたのだ。「負けたら仮面を外す」という公約もあり、皆の期待もピークに達している。
 仮面があってもなくても、久しぶりにあったお二方は当時と何一つ変わらない存在感は確かにあったと、私も思っている。むしろ正体がわからない、素顔を見せていない分だけ更にプラスアルファが上乗せされているようだった。

「もちろん忘れていないわよ」
「では――白薔薇仮面との勝負が終わった後に、仮面を外していただきましょう」

  ええーーーー!?

 暴動すら起こりそうな不満の声がこだまする中、由乃ちゃんは怒鳴るように叫んだ。

「正体を明かす時は二人同時に!! 私の勝利を信じなさい!!」

 なんて強引な。当然皆は納得しない、が……強引なのはともかく、後回しにしたい気持ちはよくわかる。

「片方がバレたら、自然ともう片方もわかってしまうからね」
「でしょうね」

 優さんの読みには私も同感だった。
 納まらない観客席を無視して、由乃ちゃんは決勝戦――の前に、副賞を貰える五位までの順位決定戦を強行した。



 二回戦で負けた面々とシード枠にいたお姉さまが、着々と勝負をこなしていく。
 順位決定戦第一試合は、可南子ちゃん対田沼ちさとさん。
 第二試合は、乃梨子ちゃん対お姉さま。

 勝ち残った可南子ちゃんとお姉さまで四位を争い、お姉さまが勝った。
 これで五位可南子ちゃん、四位お姉さま、三位志摩子が決定した。
 ホワイトボードに記された勝者決定の四文字。
 そして、ついに頂上決戦が始まる。



「それでは決勝戦を始めます」

 待ちに待った決勝の火蓋が、志摩子のなんともテンションの上がらない声で切って落とされた。
 聖さま対由乃ちゃん。
 意外な決勝戦の組み合わせに、私も客席も不思議な期待感があった。
 格としては聖さまの方が上に見えるけれど、お姉さまをやぶって勝ち抜いてきた由乃ちゃんなら……
 今まで見てきた奇跡を、今一度期待してしまう。

「由乃さん、最後まであのブックで通したな」
「そうだね」

 由乃ちゃんが使うブックは、紅と白、そして少しの黄薔薇系譜が入った三色混合ブック。
 聖さまは――

「聖さんは後半見せてた白傾向の三色か」
「祐麒はどう見る?」
「比率的には互角っぽい。あとはカード運次第」
「私もそう思う」

 由乃ちゃんの場には、「ルルニャンの獣」と「ロボ子」と伏せカード一枚。
 一方、聖さまの場には、「聖書朗読クラブの皆さん」と「ゴロンタもしくはランチあるいはメリーさん」と、伏せカード一枚。

「総攻撃力の少ない白薔薇仮面から先攻です」
「うん」

 聖さまは一つうなずき、緊張感もなく気軽にカードを一枚引く。

「『藤娘』で猫を手札に戻して、『ロサ・カツーラ』を呼び出す。で、ターン終了」

 攻撃せずにターンを終わらせる。普通なら考えられないことだが、今まで何度もしてきたことなので、もう声も上がらない。
 それよりも、皆は固唾を飲んで戦況を見守っている。双方これまでのやり口から、勝負が決まる時は一気に決着がつくことがわかっているのだ。

「私の番ですね」

 こちらは余裕もなさそうな由乃ちゃんが、厳しい面持ちでカードを引く。

「……ターン終了」

 由乃ちゃんも攻撃せず、ターンを終わらせた。
 それから数回、同じことが繰り返され、お互い手札を増やして行く。
 ――そして、聖さまが動いた。

「補助『竹刀』発動。ロサ・カツーラの攻撃力アップ。更に――」

 聖さまは、もう一枚同じカードを出した。

「もう一枚『竹刀』を出す」

  あっ!!

 観客が沸く。

「でもって『ゴロンタもしくはランチあるいはメリーさん』を出して特殊能力発動、退学の山から『竹刀』を手札に戻して更に猫を『藤娘』で手札に戻す」

  おおーーーー!!

 同じカードは最大二枚まで認められている。だがこれなら、何度でも『竹刀』を使用できる。しかも、だ。

「これでロサ・カツーラの攻撃力は令さんと同じ900だ」
「でも本当に怖いのは、あの特殊能力無効の能力だよ……」
「ああ。もう令さんより強いカードになったな」

 そう、本当に怖いのは上げられた攻撃力より特殊能力無効の方だ。
 そして更に。

「しかもあそこまで強化しておいて、消費カードは実質『竹刀』一枚のみ。このまま次ターンに行ったらまた補助返還をするだろうから」
「消費カードなしでカードを強化していることになるね」
「こりゃ怖いな……」

 そういうことだ。まさに白薔薇系譜の真骨頂。

「でも、確か『ルルニャンの獣』は攻撃力600だろ? ロサ・カツーラのHPと防御は各300。どんなに攻撃力が高くなっても一撃で倒されるんじゃないか? 特殊能力があるんだから聖書朗読クラブの能力は効かないんだし」

 優さんが冷静に問うと、福沢姉弟は同じような顔で振り返る。どうでもいいけれど優さんが「ルルニャン」なんて言うと、なんか気持ち悪いわね。

「それが、そうでもないんですよ」
「ちょっと上手くなったら、誰でも自分の要カードの防御法を考えるもんなんだ。だから当然、聖さんはロサ・カツーラを守るための手をすでに打ってる」
「最初に伏せた罠カードで?」
「そこまで先読みしますよ。聖さまは」
「ふうん……僕はあの罠カードは、自分のカードを守るものじゃないと読んでいるんだけどな」

 優さんの言葉に、福沢姉弟は目を丸くする。

「……なんで? なんか根拠があるのか?」
「根拠はないが、まずロサ・カツーラは要じゃないと思っている。だからあのカードを守ることはしないんじゃないか、ってね」
「なるほど……冷静に考えると、確かに怪しいですよね」
「だろ? 実質消費カードはまだ一枚だけで、それもこのまま次ターンに行けば復帰する。そして同じようにカードを強化できる。それならもっと有効なカードに、守るカードを当てた方が合理的だ」

 どうやら優さん、ここまでゲームを見ていてだいたいのルールは把握してしまったようだ。さすがは頭脳明晰の元花寺生徒会長だ。

「これはまずいことになりましたね」
「ええ。これからも繰り返されるだろう戦力強化に、果たして黄薔薇さまはどう対抗するのか」
「今後の展開が気になります」

 落ち着いた実況を挟んで、聖さまは肩をすくめた。「これは序の口だ」と言わんばかりに。

「じゃあ、そろそろ攻撃しようかな。ロサ・カツーラで『ルルニャンの獣』を攻撃して、退学にしよう。で、ターン終了」

 「ルルニャンの獣」はHP500防御400だから、900の攻撃ならちょうど退学にさせられる。
 そして――聖さまが動くと同時に、由乃ちゃんも動いた。

「その前に罠を発動させます!」

 高らかに宣言し、場に伏せていたカードを捲った。


 ――094 罠  タイ直し
 猫マリア様が見ています。身だしなみはきちんとね。通常・幹部生徒が退学にさせられた時に発動可能になり、場にあるカードと退学させられたカードを姉妹にし、共に苦楽を分かち合う。姉妹化できない条件があったり元からできないカードには使えないのでミスに注意。


「これでチーターとロボ子を姉妹にし、相手の攻撃900を、プラスされたHP700と防御800で受けます!」

 おおーーーー!!

 ガタタッと椅子を揺らして、福沢姉弟と瞳子ちゃんとアリスが思わず立ち上がる。

「これいいよ! これいいよ祐麒!」
「様子見と防御と戦力強化を一手でこなしたな!」

 今の一手は私もいいと思った。カード一枚であそこまで聖さまの手の内が見られたのなら安いものだ。

「へー……そういうのって終盤で使うもんだと思ってたんだけど。まあいいや、ターン終了ね」

 感心するように何度もうなずく聖さまは、改めてターン終了を宣言した。

「一枚引いて、『盗撮ガール』を呼び出し特殊能力発動!」
「あ、罠捲るのね」

 聖さまの指が、伏せられたカードを捲る――と。

「「六月の雨!?」」

 通称幹部殺しでお約束となっているカードだ。聖さまが使用するにしてはお約束すぎて少々違和感があるものの、使えるカードであることは「お約束」であるのだから明白だ。

「やっぱりそれか……」
「あれ? 由乃ちゃん、読んでた?」
「いえ、あったらまずいカードだと思ってました――『藤娘』で『盗撮ガール』を手札に戻します」

 ほう……

「覗き見コンボですね」
「白が得意な人以外はあまり知られていないコンボですが、消費することなく相手の伏せカードを一枚知ることのできる大変有効なコンボです」
「白薔薇系譜を入れるなら、『藤娘』は絶対に入れなくては行けません。じゃないとカード消費がすごく早くなってしまいますから」
「なるほど」

 司会の解説が入り、由乃ちゃんはまだ動く。

「更にもう一枚、『藤娘』を出して姉妹を手札に戻します!」

 おおーーーーー!!

 姉妹を手札に戻すと、二枚一組のカードが二枚のカードに戻ってしまう。姉妹化を無理やり解除することになるのだから玄人好みの一手と言える。

「確認します――はい、確かに黄薔薇さまの手札には『藤娘』が二枚あります」
「藤娘は1ターンにつき1回しか発動できません」

 ふむ……面白くなってきた。
 これで由乃ちゃんの場には一枚もカードが出ていない状態になった。
 これは、紅薔薇幹部カードを出す前兆だ。
 だが『六月の雨』が罠にあるとわかっている以上、それをどうにかしないと呼び出すだけ無駄になる。

「祐巳、罠カードを破壊する方法は?」
「白薔薇系譜に入ってるあのカードか、もしくは――」
「もしくは、補助の罠無効だな」
「由乃さんはどっちを選ぶのかな」
「俺ならどっちも使っておく。聖さんはまだ伏せカードを一枚しか出してない。まだこの先何が出てくるかわからないからな」

 果たして、福沢姉弟の読み通りのカードを由乃ちゃんは出した。

「カードを二枚伏せて、補助『シンデレラ』を発動!」


 ――120 補助  シンデレラ
 三薔薇が揃って共演を果たした劇「シンデレラ」は、今も語られる美の祭典。詳しく知りたい人は新聞部か写真部へお気軽にご相談ください。発動させると相手の罠カードを1枚だけ無効化する。このカードは使った瞬間に退学になる。


「……あ」

 由乃ちゃん優勢のように見えていたのだろう祐巳は、愕然とした顔をする。
 気付いたのだろう。あのカードの欠点に。

「シンデレラの無効化って、一枚なんだろう?」
「そうよ」

 優さんも気付いているらしい。

「優先一枚?」
「注書きはないけれど、任意で選べるのなら発動規約に書かれているわ」
「なるほど。じゃあ先に捨ててもいい罠カードで無効化を消して」
「改めて『六月の雨』を発動する」
「となると、二枚伏せたカードが?」
「果たしてどうかしら。確実に罠を発動させるカードもあってよ?」
「へえ……奥が深いな」

 しかし……どうだろう?
 由乃ちゃんの読みは、もっと別のものを見ている気がする。
 皆が「六月の雨」を発動させなうよう考えているようだが、そこではなくて、もっと違うところを見ているのではないかしら?

「――『ロザリオ』と『ドリルっこ』を場に出し、『紅薔薇潔癖お嬢』を呼び出します!」

 幹部カードが出たことで、歓声が上がる。

「さっちゃんが出たね」
「あの名前、どうにかならないかしら」
「ぴったりだと思うよ」
「余計なお世話よ」

 まったく、どうしてあんな名前にしたんだか。

「紅薔薇さまでロサ・カツーラを攻撃して、手札を1枚破壊してターン終了です」
「うん、わかった」

 由乃ちゃんは、聖さまの広げられた手札から1枚選んで退学送りにした。ちなみにカードは「悲劇のヒロイン」。黄薔薇革命の時の生徒ね。誰かは知らないけれど。

「うーんどうするかなー……」

 聖さまは一枚引いたところで、真剣に悩んでいるようには見えない笑みをこぼしている。

「ねえねえ祐巳さん、ここは紅薔薇さまを退学させるべきよね?」
「うん」

 アリスがぐいぐいと祐巳の腕を引っ張るが、祐巳は振り向かず厳しい顔でモニターを睨んだままうなずく。

「だからここで通常カードを出して、何がなんでも紅薔薇さまを倒すべき。でも、それはやっちゃいけない」
「え? そうなの?」
「由乃さんの伏せカードだろ? 祐巳はなんだと思うんだ?」
「一枚は罠無効。もう一枚は――きっと『猫マリア様のいたずら』」
「強制ターン終了か。俺もそう思う」
「聖さまが焦って動いたらまずい。けど」
「聖さん、それも視野に入れて考えてるな」

 私もそう思う。聖さまはその可能性も考えている。「猫マリア様のいたずら」は、ちゃんと気をつけていれば防げるカードだ。

「とりあえずあのカードを警戒して、カードを一枚伏せよう」

 いたずらは、相手ターン第一手目で通常カードを出した時のみ発動可能。だからこうやって簡単に発動させられなくなってしまう。聖さまの言う「あのカード」は、間違いなくいたずらを指しているはずだ。

「そしてすぐに発動させて無効化を解除」

 罠カードは基本的に自ターンでは発動できないが、例外のカードもある。罠であって唯一自ターンで発動できる「ポニー新聞」とか。
 でも、白薔薇系譜も含めれば、その法則は成り立たなくなる。


 ――068 特殊  環境整備委員会の皆さん  HP350 攻撃200 防御300
 環境整備委員会の皆さん。日夜勉学に励む乙女達のために、ルルニャン女学園の環境をより良いものにするべく活動している。あの白薔薇さまも所属。現在ボランティア募集中。皆さんの清い心でルルニャンを綺麗にしてみませんか?
 噂による特殊能力「たまには委員会便りも読んでください」は、罠に伏せることで発動し、自分・相手プレイヤーと幹部含む全生徒達にHP−100の皮肉の一撃を与える。発動は相手ターン、自ターンでも双方可能。このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。


 自分も対象に入るダメージカードで諸刃の剣もいいところだが、それを入れているのも聖さまらしい。

「カードを伏せて、ターン終了」

 客席が、今日一番の統一性のないざわめきを上げる。
 「紅薔薇さまを放っておいていいのか」という類のものだ。
 せっかく罠無効化を解除し「六月の雨」も使えるというのに、聖さまは動かなかった。

「すごいな、佐藤さん」
「そうね」

 この状況で動かない勇気。さすがは聖さま、勝負どころがよくわかっている。
 そう、攻めに転じるにはまだ早い。まだだ。

「行きます!!」

 由乃ちゃんが気合いの入った声を上げた。

「場に出ている『ロザリオ』で『ドリルっこ』と紅薔薇さまを姉妹化! 『藤娘』で姉妹を手札に戻し、『ロボ子』と『かしら&かしら』を呼び出し、祐巳さんを出します!」

 勝負に出たわね、由乃ちゃん。

「もう一枚の『藤娘』でかしら&かしらを手札に戻し紅薔薇さまを呼び出します! 更にもう一枚のロザリオで紅薔薇幹部を姉妹化!」

  ……おぉぉぉぉーーーーー!!

 素早い動作であっと言う間に幹部同士の姉妹ができあがり、少し遅れて声が上がる。

「紅薔薇さまと姉妹にすることで、祐巳さんの能力2倍! ロザリオの効果でプラス100して、攻撃力1400でカードを素通りして白薔薇仮面を直接攻撃します!」

 甘い。甘いわ由乃ちゃん。確かにそれが通れば一撃で勝負が決まるけれど――

「ごめんね。罠発動」

 聖さまがそれを許すわけがない。


 ――076 特殊  仮にAさん  HP200 攻撃300 防御300
 個人名を伏せる際に便宜上「Aさん」と呼ばれる生徒達。片や新聞部の部員だったりイタリアで迷子になった生徒だったりする。特殊能力「出ないだけで名前はあります」は、罠に伏せておくことで発動し、手札の1枚を任意で退学にすることで1枚だけプレイヤーに対する攻撃を完全に無効化する。このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。


「え……!?」

 由乃ちゃんが凍りついた。きっと考えもしなかった罠だったのだろう。
 やはり由乃ちゃんは、「六月の雨」を見ていなかったのだ。だから伏せカードに罠無効を入れなかった。
 恐らく、私のカードは捨てカードだったのだ。悠々と構える聖さまを動かすためのカードだった。
 しかし予想外に、聖さまは私のカードを「特に問題なし」と言わんばかりの態度で放置した。
 だから由乃ちゃんは、勝負に出た。たぶん聖さまの余裕は「はったりだ」と判断したのだろう。それか「罠無効を無効化するカード」だと踏んだのかも知れない。
 だが、甘かった。
 聖さまは私のカードを放置したわけではなく、更に先を読んでいただけに過ぎない。
 自分をオトリにして、由乃ちゃんが勝負に出るのを待っていた。私のカードが出されたことで、祐巳のカードが存在することを確信したんだろう。

「惜しかったね」

 由乃ちゃんの伏せカードは、同時に二枚伏せられた。つまり「その状況でもっとも有効なカードを伏せた」わけだ。
 だがその状況は、今終わった。
 残念ながら、先に仕掛けた由乃ちゃんの負けだ。焦ったわね、由乃ちゃん。

「う……これでターン終了、です……」

 まずい状況なのがわかっている由乃ちゃんは、震える声で宣言する。

「じゃあ私の番ね。まずは補助発動」


 ――025 通常  2年生 変に弁が立つ生徒  HP300 攻撃350 防御400
 002「満面タヌキ」と小学部で同じクラスだった生徒。たとえ自分が間違っていても、多少の間違いなら自己を正当化する弁護士向きなタイプ。意外とすごい生徒だけど目立たないし、タヌキも名前を思い出せない。噂による特殊能力「説得」は、幹部を除く全カードを1ターンの間だけ停学にする(仮退学扱い。1ターン過ぎるとカードは復活する)。ただし特殊能力を発動すると、このカードは退学になってしまう。このカードは特殊で、通常としても補助としても使用できる。


「まず、これで幹部姉妹を停学ね」

 姉妹化は二枚一組でありながら、一枚のカードとしてカウントされる。そして姉妹化した瞬間から「姉妹カード」になるので、幹部組でも幹部としては見られない。

「でもって『藤娘』で聖書朗読クラブを手札に戻して、『黄薔薇騎士レイ』と『かしら&かしら』を呼び出す。『竹刀』で『かしら&かしら』の攻撃力を上げて、『かしら&かしら』で『ロボ子』を攻撃、退学にする。場に居るロサ・カツーラと令でプレイヤーを攻撃、と」
「…………」

 由乃ちゃんは動かず呆然としている。

「……もしかして、勝負あり?」



「――第二回カードゲーム大会、優勝者は白薔薇仮面です!!」

  わぁーーーーーー!!!

 校外まで聞こえているんじゃなかろうかという大きな拍手と、「白薔薇仮面さまぁ!」というスターへ対する呼びかけにも似た声が上がる。
 敗北した由乃ちゃんはすぐに復活し、今は元気にマイクを握っている。

「それでは白薔薇仮面、今のお気持ちを一言!」
「楽しかったよ。組み合わせが良かったから薔薇さま方とも勝負できたしね。それにしても由乃ちゃん強いねー」
「あ、ちょ、やめてくださいよっ」

 ぐりぐりと由乃ちゃんの頭を撫でる聖さま。

「そろそろいいでしょ?」

 言いながらモニターに入ってきたのは、お姉さまだ。

「そうだね、もういいか。それじゃ由乃ちゃん、振りよろしく」
「は? ……ああ、はい。わかりました。
 ――白薔薇仮面との公約は果たされませんでしたが、本人の希望によりOKが出ました! ここでお二人の仮面を外していただきましょう!!」

 私は耳を塞いだ。
 横を見ると優さんも祐巳も祐麒さんもアリスも、同じように耳を押さえていた。
 今度の声は、恐らく今日一番のボリュームだ。



「妹達と遊びに来ていたのよ」
「ちょっと調子に乗っちゃった。どう? まだまだ現役女子高生で行けるでしょ?」

 耳を塞いでも耳が痛くなるような声が収まり、私はようやくインタビューの方へ耳を傾けることができた。
 半数以上はお姉さま方を知らないはずなのに、まったく大した人気だ。

「なるほど、遊びに……あ、え? 時間が押してる? すみません、詳しくは後日のリリアンかわら版に掲載されます! お楽しみに!!」

 巻き起こるブーイングなど物ともせず、由乃ちゃんは賞品授与へ移る。
 一位の聖さまはロサ・ギガンティアのカードホルダーを。由乃ちゃんはロサ・フェティダのカードホルダーを。志摩子は残ったロサ・キネンシスのカードホルダーを選んで受け取った。

「――紅薔薇さま。スタンバイお願いします」
「あ、はい。それじゃ行ってきます」

 副賞の相手に選ばれているのだろう祐巳は、呼びに来た実行委員と駆け足で薔薇の館に入っていった。
 ……行ってしまった……

「…………」
「…………」
「…………」
「……いいなぁ祐巳さん……」

 ピクッ。

「いい? アリス、いいって何……あ、祐巳ちゃんは副賞のキスに選ばれてるのか」

 ピククッ。

「さすが祐巳ちゃん、モテモテだね」
「優さん」
「ん?」
「殴っていいかしら?」
「お兄さま、私もいいですか?」
「俺もいいか?」
「あ、じゃあ、私も」
「…………ダメだ。絶対ダメだ。特にグーでなんてとんでもない」



 一位の聖さまは、お姉さまを指名した。

「な、なんで私を……」
「みんなの前で蓉子の私に対する愛を示して欲しいから」
「愛なんてないわよっ」

 お姉さまは私にも見せたことがない心底恥ずかしそうな顔で、緊張に震えながら聖さまの頬に唇を寄せた。
 ……聖さま、覚えてなさい。



 二位の由乃ちゃんは、田沼ちさとさんを指名して会場を沸かせた。

「勘違いしないでよ!? 日頃のお礼程度のものなんだからね!」
「……じ、事情はどうあれ、まさか私が選ばれるとは思わなかったわ……」

 どちらも恥ずかしそうに顔を赤らめ、自分で選んでおきながら嫌そうな顔をして由乃ちゃんはちさとさんの頬に唇を寄せた。
 なんだか微笑ましかった。



 三位の志摩子は、実行委員から蔦子さんを指名した。

「え、いや、私は写真を撮る方に……」
「たまには表舞台に立つのもいいでしょう?」

 これ以上ないほどうろたえる蔦子さんに微笑み掛ける志摩子は強引に迫り、襲うように蔦子さんの頬に唇を寄せた。
 すぐそこにいた「盗撮ガール」似の女の子が、なぜかブルブル震えていた。「そんな話なかったのに……!」と怒気を含んだ言葉を吐き捨てるように呟いていた。



 四位のお姉さまは、なんと、祐巳を指名した。

「わ、私ですか!?」
「もちろん選んだ理由は可愛い孫だから」

 優しげに微笑み頬を撫でるお姉さまに祐巳は顔を真っ赤にし、背伸びする態度が妙に生々しく祐巳はお姉さまの頬に唇を寄せた。
 ……なんだかとても口では言い表せないほどの喪失感を覚えた。



 五位の可南子ちゃんは、やはりというか、祐巳を指名した。

「……意外。私を選ぶなんて」
「祐巳さまは今でも、私にとって特別な方です」

 どちらも笑いながら「ご褒美以上の意味はない」という態度で、祐巳は腰を屈める可南子ちゃん頬に唇を寄せた。
 瞳子ちゃんが「キーッ!」と叫んでいた。たぶんそういう意味はあったのだろう。



「――はい! これで第二回ルルニャン学園カードゲーム大会は終了……と言いたいところですが、最後にゲストの登場です!!」

 ゲスト?
 ここから先は、私達も知らされていない何かがあるようだ。

「さっちゃん?」

 優さんの「誰?」という視線に、私は首を振って応える。

「知らないわ。祐巳……は、まだ戻ってないわね。瞳子ちゃん、聞いている?」
「いえ。ただ、一位の人はある人と勝負してもらう……という話は聞いていますわ。誰かまでは聞かされていませんけれど」
「ユキチも祐巳ちゃんから聞いてないのか?」
「俺も瞳子ちゃんと同じようにしか聞いてない。妹に教えないことを弟に教えるわけないだろ」

 その認識はどうなのかしら? 義理の妹と、実の弟。果たしてどちらが大事なのか?
 ……人それぞれ、かしら。いや、最初から比べるものでもないのかしら。
 私達も含めてざわめいていると、由乃ちゃんは勢いよく言い放った。

「それではご紹介します! 特別ゲスト――学園長、シスター・上村です!!」

  ええーーーーーーっ!!

 最後のサプライズには、誰もが声を上げて驚いた。もちろん私も。
 ……でも、……ああ、そうか。そういうことね。

「そうか、道理でな……」

 優さんも気付いたらしい。というより、私達にとっては堂々としすぎていて盲点になっていた。
 卒業生とは言え、お姉さま方はもう部外者に等しい、ということだ。
 それが堂々と平日の放課後に出没し、あまつさえこんな大舞台に立っているのだ。誰かしらの許可なくして、こんなことは常識で考えて不可能。
 つまり、出入りを許可した「誰か」は、シスター・上村だったと。
 冷静に考えてみると、「正体不明人物が出入りしている」という先週までの状況は、ただの一教師が個人的に許可できることではない。しかし職員会議に掛けるほどでも、また常識で考えて議論するだけの題材でもない。
 独断で許可を出せる人物がいるとすれば、それは最高責任者だけだ。

「そりゃ教えないはずだな」
「そうね」

 こんなイベントに生徒に混じって参加するとなるば、それは色々な人達が反対するだろう。だから最後の最後まで隠し通して、引き返せないところで強行するしかないわけだ。
 ここまで興奮状態にある生徒達は、教師達でも止められまい。いくらリリアンの生徒達のしつけが行き届いていたとしても無理だろう。

「さすがの私も、なんというか、……予想すらできない登場だと思ってしまうんですが、ご本人はいかがでしょうか?」

 由乃ちゃんはかなり緊張の面持ちで、おずおずとマイクの先をシスター・上村に向ける。

「そうでしょうねえ。私も予想すらしていませんでしたよ」

 ……え? どういう意味?

「え、と……その、では、どのような意図で参加を……?」
「最初は反対だったんですよ」

 …?

「リリアンの個人情報と内部事情が露出しているカードゲームの開発。私達教師側に報告が回ってきた頃には、もう試作カードが出来上がっていました。当然、私達はカードの市販には反対でした。特に営利目的で情報が売られるとなれば、それは決して許されないことです」

 シスター・上村は、穏やかな笑顔でリリアンの生徒達に冷や水を浴びせるような言葉を連ねる。

「教師側が満場一致で却下する方針を固めた時、私は報告書にあった一文に目を止めました。開発に携わった生徒達の名前と各クラブ名が並び、問題の一文はその下にありました。
 そこには『リリアン女学園に関わる全ての人達に遊んでもらいたい』と書かれていました。
 その文章を読んで、これが営利目的で開発されたものではないことを悟りました。次に、改めてカードを見ました。よく考えて作られていることを知りました。今度は遊んでみました。なかなかしっかりしたものができていると思いました。
 あらゆる意味で波紋を呼びましたよ。教師達がどれだけ生徒のことを把握しているのか。このカードに書かれている事件はいつ起こったのか。どのような解決へ辿り着いたのか。仮にA先生は事件を知っていて結末は知らず、B先生は事件の詳細は知らないけれど結末は知っていた。
 貴女方に貴女方だけの世界があるように、私達にも私達だけの世界があります。そして私達は、貴女方の世界を見守ることをすでに選んでいました。
 貴女方が、貴女方の世界を舞台にしたゲームを作った。けれどそれは真剣で、決して遊びで作ったわけではない。だから許可しました。
 出資やその他、私達の世界のことも、ちゃんと話を付けていましたしね」

 それは、恐らく初めて語られたのだろう「カードに対する教師側の意見」だった。

「……どうしました、島津由乃さん? 他に聞きたいことはないのですか?」
「え、あ、はいっ」

 客席や私達同様に驚き固まっていた由乃ちゃんは、シスター・上村の呼び掛けに直立不動で返事をした。

「あの……それでは思い切って聞きますが、……現状のリリアンを好ましくお思いですか……?」
「私は問題があるとは思っていませんよ。まあ職員室では賛否両論あるようですが」
「やっぱり賛否両論ですか……」
「校風のこともありますが、それよりもやはり中等部などに影響を与える点が問題視されますね。中等部から高等部へ上がる際、自由が利くようになるでしょう? あまり派手にやると下の子達がやきもきしてしまいますよ」
「……そういう話は入ってませんが、中等部でもカードが流行っていたり……?」
「そういう話は聞きませんけれど、きっと流行っているでしょう。目標とするべきお姉さま方が夢中で遊んでいるのですから、興味を持つなと言う方が酷です」
「そ、そうですね……」
「――由乃さん」
「え?」

 真美さんの声とともに由乃さんがフレームアウトし、「失礼します」と司会が真美さんと入れ替わった。

「新聞部部長の山口真美です。私からお聞きしてもよろしいですか?」
「ええ、どうぞ」

 インタビュー慣れしているせいか、由乃ちゃんより真美さんの方が堂々としている。まあ片や猫耳付けたお祭り状態なのだから、それはそうかも知れないが。

「この場で聞くのはどうかと自分でも思いますが、カードゲーム規制に乗り出す構えはおありですか?」
「ありませんね。リリアンの生徒が遊びで倫理的判断が鈍ることはないと確信していますから。ただ、もう少し控えめに遊んでいただけると大変助かります」

 「校内新聞で呼びかけることをお約束します」と真美さんは冷静に応えた。

「大会にお顔を出された理由は、ゲストとして参加するためでしょうか?」
「そうです。ごちゃごちゃ言っていますが、私もカードのファンで、遊ぶために来たのです。今回は山百合会の方々のご厚意でイベントに参加させていただきました」
「少々突っ込んで聞きますが、それはシスター・上村の独断ですか?」
「個人的に参加することに、誰かの許可が必要ですか?」

 ……とは言うものの、これが終わったらきっと小言くらいは貰う覚悟はできているだろう。学園長が直接動くとなると、教師側からクレームだって出るはずだ。
 自分でもわかっている証拠に、最後の最後まで出場を隠しておられたのだ。知られてしまうと阻止される動きも起こりうるから。
 というか、ファンなのか。ファンなのかシスター・上村。

「わかりました。それではそろそろ本題に入ろうかと思うのですが」
「本題に?」
「やるんですよね?」
「もちろん。そのために来ましたから」

 シスター・上村がゲームをやるのか……意外というか、予想外というか、違和感しかないと言うか……

「それでは最終戦を始めます!」



 長い長い一日が過ぎて行く。
 乙女達の喜怒哀楽は青空の彼方に響き、遠い山間の向こうから明日を呼んで来た。夕陽に追いつかれないよう皆は静々と帰途に着く。
 静けさの中に、夜の色が混じった優しい風が通り抜ける。

「お姉さま」
「祥子」

 過去に置いてきた時間、二度と訪れないだろうと思っていたリリアンに。
 私と、妹と、姉がいる。
 あまり多くは語らず、初めて三人だけで下校した。



 暑い六月が起こした小さな奇跡の一日だった。





 了





本日の使用カード

025 通常  2年生 変に弁が立つ生徒  HP300 攻撃350 防御400
 002「満面タヌキ」と小学部で同じクラスだった生徒。たとえ自分が間違っていても、多少の間違いなら自己を正当化する弁護士向きなタイプ。意外とすごい生徒だけど目立たないし、タヌキも名前を思い出せない。噂による特殊能力「説得」は、幹部を除く全カードを1ターンの間だけ停学にする(仮退学扱い。1ターン過ぎるとカードは復活する)。ただし特殊能力を発動すると、このカードは退学になってしまう。このカードは特殊で、通常としても補助としても使用できる。


068 特殊  環境整備委員会の皆さん  HP350 攻撃200 防御300
 環境整備委員会の皆さん。日夜勉学に励む乙女達のために、ルルニャン女学園の環境をより良いものにするべく活動している。あの白薔薇さまも所属。現在ボランティア募集中。皆さんの清い心でルルニャンを綺麗にしてみませんか?
 噂による特殊能力「たまには委員会便りも読んでください」は、罠に伏せることで発動し、自分・相手プレイヤーと幹部含む全生徒達にHP−100の皮肉の一撃を与える。発動は相手ターン、自ターンでも双方可能。このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。


076 特殊  仮にAさん  HP200 攻撃300 防御300
 個人名を伏せる際に便宜上「Aさん」と呼ばれる生徒達。片や新聞部の部員だったりイタリアで迷子になった生徒だったりする。特殊能力「出ないだけで名前はあります」は、罠に伏せておくことで発動し、手札の1枚を任意で退学にすることで1枚だけプレイヤーに対する攻撃を完全に無効化する。このカードは特殊で、通常としても罠としても使用できる。姉妹にすることはできない。


094 罠  タイ直し
 猫マリア様が見ています。身だしなみはきちんとね。通常・幹部生徒が退学にさせられた時に発動可能になり、場にあるカードと退学させられたカードを姉妹にし、共に苦楽を分かち合う。姉妹化できない条件があったり元からできないカードには使えないのでミスに注意。


120 補助  シンデレラ
 三薔薇が揃って共演を果たした劇「シンデレラ」は、今も語られる美の祭典。詳しく知りたい人は新聞部か写真部へお気軽にご相談ください。発動させると相手の罠カードを1枚だけ無効化する。このカードは使った瞬間に退学になる。




おまけ【No:2288】






(コメント)
海風 >終わったー。もうネタ出ないー。妙に長くなってしまったこのシリーズ、読んでくださった皆さん本当にありがとうございましたー。それにしても最後まで長くてすみません…orz(No.15224 2007-05-24 02:22:11)
海風 >あ、このシリーズの修正なんかは後から入れさせていただきますので。(No.15225 2007-05-24 02:24:16)
Mr.K >お疲れ様です。 前回のコメント覧で海風さまが申された通り急ぎ足な感覚は否めませんでしたが最後まで楽しめました。(No.15230 2007-05-24 05:17:00)
HHH >お疲れ様でした。毎回掲載を楽しみにしておりました。終わってしまうのが残念です。ところで『かしら&かしら』は姉妹化不可だった気が...(No.15232 2007-05-24 11:19:49)
海風 >うわヤバイ! 言われてみれば確かに「かしら」は姉妹化できなかった! …修正できるかなぁorz ミス指摘ありがとうございました…(No.15235 2007-05-24 19:58:17)
菜々し >お疲れ様でした。このシリーズは長くて読み応えがあるので、かなり好きでした。内容も面白いし、読んでいて飽きませんでした。また機会があれば、番外編などもあるとうれしいですね。(No.15236 2007-05-24 22:29:59)
YHKH >お疲れ様でした!大長編になってしまいましたね。とても面白かったです。ありがとうございました!(No.15237 2007-05-24 22:43:04)
tuka >お疲れ様でした。毎回、続きが楽しみでした。でも、もう続きが無いのが残念。(No.15238 2007-05-24 23:22:15)
Mr.K >もうこの作品のためだけに毎日3回は掲示板覗いてたので、完結が残念すぎるのが本音ですね(No.15241 2007-05-25 00:14:27)
えろち >お疲れ様でした。もう、Mr.K様と同様。この掲示板開きっ放しつつ一日7,8回以上はリロードしてました。大変に読み応えある作品、ありがとうございました。 それにしても志摩子さんグッジョブ!笙子さん美味しいなぁー。きっと、笙子さん写真は撮れなかったんだろうなぁーと。微笑ましい限りであります。(No.15243 2007-05-25 01:25:36)
さんたろう >ゲームに関するお話もさることながら、幕間に展開される(今回の)サブキャラ達のお話が楽しかった。もし私がルルニャンに関わるとしたら、プレイヤーとしてではなくコレクターとしてでしょうね。そしてNo.000が手に入らなくて悩むと(笑)(No.15244 2007-05-25 09:06:30)
さんたろう >あと、……………………「猫耳イェーーーー!!」(気に入ったw)(No.15245 2007-05-25 09:17:17)
菜々し >猫耳イェーーーー!!(No.15246 2007-05-25 10:23:20)
砂森 月 >最後まで楽しく読ませて頂きました。話の基本がしっかりしてるし盛り上げ方も上手いですし。私がこのゲームをやるとしたら……あえてランダムでカード選んで遊びそう(ぇ(No.15248 2007-05-25 13:21:20)
篠原 >誰も触れてませんが、スペシャルゲストの予想は「学園長という立場の人」でした。と、自慢しておこう。(No.15259 2007-05-27 01:31:23)
海風 >皆さんコメントありがとうございます。 Mr.Kさん>やっぱ急ぎ足でしたよね……もう少し腰を落ち着けて書けたらよかったんですけどね… HHHさん>ミスご指摘ありがとうございます。たぶん修正できてると思いますが… 菜々しさん>あ、おまけ書きました。よろしければそちらもどうぞ。(No.15278 2007-05-28 11:46:33)
海風 >YHKHさん>我ながら長いなぁコレと思ってました。やっぱ長いですよねこれ…最初は読みきりのつもりで書いたのになぁ… tukaさん>楽しんでいただけたようで嬉しいです。ありがとうございました。 Mr.Kさん>二度目のコメント返しですw いや本当に、待っていてくれる人がいたから書けたようなものです。コメント付くたびに狂喜乱舞して書く気になっちゃうから怖いです、ここ。(No.15279 2007-05-28 11:53:32)
海風 >えろちさん>笙子ちゃん、私の中でおいしいキャラに育ってます。いいですよねー。 さんたろうさん>私は集めつつも遊ぶ方かなぁ…でも私はきっと弱いでしょう…orz さんたろうさん、菜々しさん>猫耳イェーーーー!! 実は「猫耳ヤフーーーー!!」と迷いました…イェーで正解だったようでw 砂森 月さん>私的に志摩子さんがそんな感じです>ランダム 篠原さん>そこまで正確に当てましたか。すごいっす。お見事。(No.15281 2007-05-28 12:02:31)

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