がちゃS・ぷち

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No.3897
作者:ジャックフロスト
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2020-06-08 04:21:09
萌えた:1
笑った:5
感動だ:1

『自由奔放におしゃべりペットな祐巳ちゃん』

【No:3895】【No:3896】の続きの続き
薔薇の館脱出作戦白薔薇編



梅雨のじめじめした季節のある日、私はまた作戦を考えていた。

「白薔薇さま、何かいい案ないですか?」

「祐巳ちゃんいると楽をできて楽しいのに私がそんなの考えると思う?」

「ぐぬぬ」

「もうあきらめなよ。これ見てみてよ」

そう言うと白薔薇さまはリリアン瓦版を出してきた。

そこには山百合会のマスコット鳥居祐巳の日常と題した連載記事があった。

「な、なんですかこれ!」

「え、本当に知らなかったの?この連載もう4回目よ」

「…志摩子さん知ってた?」

「ええ、多分知らない人のほうが少ないんじゃないかしら」

なんといつの間にそんなことに。

「祐巳ちゃん、これに落とし穴作ろうとして祥子に怒られたってあるけど本当?何してるのよ」

「これ私の単独犯みたいになってるじゃないですか!本当は由乃さんも一緒で令さまと祥子さまに怒られました」

「本当に何やってるのよ…」

「江利姉をぎゃふんと言わせたいという意見が一致しまして実行に移しただけですよ」

由乃さんは手術をしてからさらにアグレッシブになってきてついていくのが大変である。

祐巳さんが主犯よ!って言葉が聞こえた気がしないでもないけど気のせいだろう。

「お、いいね。次は私も混ぜてよ」

「お姉さま、紅薔薇さまに報告しておきますね」

志摩子さんがそうにっこり笑った。

「祐巳ちゃん、なかったことにしてくれ」

白薔薇さまは思い切り土下座をした。こんな頻繁に土下座する人が薔薇さまでいいのだろうか。

「他人事のような顔してるけど祐巳ちゃんも将来そう思われる側よ?」

顔に出てしまっていたようだ。

「私は薔薇さまにならないから平気ですよー」

私は笑った。

「どうだろうね」

白薔薇さまはにやっと笑ってコーヒーを飲んだ。

ふうとため息をついて、ちらっとリリアン瓦版を見る。

「それにしてもマスコットってなんですか」

「そりゃ江利子の実の妹ではあるものの誰の妹でもないのにやたらとなじんでるからでしょ」

「祐巳さん可愛らしいからそうなるのもわかるわね」

白薔薇姉妹がそう言った。

「抱き心地もいいしね」

「ぎゃ!」

白薔薇さまが抱き着いてきた。

「これこそが祐巳ちゃんの天職だよ」

「離れてくださいよ!ん…天職?」

「どったの?祐巳ちゃん」

「私の役目がマスコットなら新たなマスコットを用意すれば解放される!」

私はまた名案を思いついてしまった。

「祐巳さんそれは無…」

「志摩子、しーっ!面白いことになりそうだ」

2人が何か言ってるが無視することにする。

「というわけで志摩子さんマスコットやってみない?」

「遠慮しておくわ」

無茶苦茶いい笑顔でお断りされてしまった。

「祐巳ちゃん、マスコットに必要な要素は何だと思う?」

「うーん…モフモフ感だと思うんですよね」

「それで志摩子?」

「志摩子さんの髪モフモフするじゃないですか?いい匂いだし」

「なるほど、祐巳ちゃんの次にマスコットに近いのは確かだけどね。祐巳ちゃんにあって志摩子にないものがあるのよ」

「私にあって志摩子さんにないもの?」

「そう、それはね。自然になじむ親しみやすさよ!」

「親しみやすさ、そうか!わかりました!ピッタリな人物連れてきます!」

そう言って私は飛び出ていった。

「いったい誰を連れてくるんだろうね」

「祐巳さんの考えは私にはわかりかねます」


「お断りされました」

「いったい誰のところに行ったのよ?」

「中等部の青田先生のところです」

「青田先生?」

「そうです!教師だからなじんでるし、あだ名ははミッフィーでマスコット感バッチリでしょう?」

「言いたいことはいろいろあるけど、それでどうなったの?」

「マスコットになって下さいって言ったら君さらにあほになってないか?と言われました」

「ぶふぉ」

「くっ…っ」

2人とも笑いをこらえてるようだった。真剣に話をしているのに失礼な。

「いやいやふつうに考えて真っ先に教師に行くのおかしいでしょ」

「えー、名案だと思ったのに…」

「祐巳ちゃん肝心なところが抜けてるわよ」

「肝心なところ?」

「そう、かわいらしさよ!」

「かわいらしさですか…ちょっと行ってきます!」

そう言って私はまた飛び出した。

「さてさて、次は何を起こしてくれるかな…って志摩子大丈夫?」

「す、すみません。おかしくって」

「将来おそらく一緒に薔薇になる志摩子は大変そうね…」


「ただいま帰りました!」

「おかえりー見ればわかるけどそれは?」

「学校にいた猫です!これをマスコットにしましょう!」

「これゴロンタよね?よく嫌がられなかったわね」

「?よく分からないですけどすぐなついてくれましたよ」

「同族な感じがしたのかな」

「同族って何ですか同族って。まあとにかくこれで私は解放ですね!」

私はうきうきして小躍りした。

「で、この子はどうやって祐巳ちゃんがしてた仕事をするのかな?」

「え?」

「蓉子や江利子が望んだのは人手だけど?」

「マスコットじゃ…?」

「それは外から見てそう見えるだけで実際はいろいろ仕事してるよね?」

「わ、私は今まで何を…」

「それに江利子と蓉子が言ってたこと覚えてない?出入りしても不自然でない人物、妹候補として騒がれない人物。そんなの祐巳ちゃん以外にいる?」

「ぐぬぬぬ」

「あらあら、志摩子も何か言っとく?」

「そうですね…祐巳さんこれからもよろしくね」

「はい…」

作戦はまたもや失敗してしまったようだ。

ついでに青田先生に迷惑かけたのがばれてまた祥子さまに説教を食らった。

ゴロンタは薔薇の館に1度入ったせいか薔薇の館の周りをうろうろするようになった。
そこに人が集まるようになり、ちょっと賑やかになったわね。と紅薔薇さまが笑っていた。
紅薔薇さまに猫の手も借りたかったんですね。と言ったらさらに笑われた。

次こそは成功させるぞ!


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