がちゃS・ぷち

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No.2255
作者:杏鴉
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2007-05-09 06:39:20
萌えた:1
笑った:0
感動だ:0

『振り向きざまの志摩子様がみてる』

『藤堂さんに古手さんのセリフを言わせてみる』シリーズ

これは『ひぐらしのなく頃に』とのクロスオーバーとなっております。本家ひぐらしのような惨劇は起こりませんが、気の毒なお話ではあります。
どうぞご注意を。

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――木曜日・幕間――


昼休み、薔薇の館には志摩子と乃梨子の二人だけだった。
お弁当箱の中味を殆どたいらげた頃、乃梨子がポツリと呟く。

「祐巳さま、どうしちゃったのかな……」
「……一昨日、私が無理に連れてきてしまったのが良くなかったみたい」
「そ、そんな! 志摩子さんの所為なんかじゃないよ!……私が余計な口を挟んで紅薔薇さまを怒らせちゃったから、あんな事に……」
「乃梨子、それは違うわ。あなたは何も悪くない。悪いのはね……無力な私なのよ」

そう言って志摩子は話を終わらせた。
乃梨子はそんな事はない≠ニ言いたかった。けれど、どこか諦観したような表情で窓の外を見る志摩子の横顔が、それを拒絶していた。
わざと自分を見ようとしない志摩子に気持ちが萎えかける乃梨子だったが、彼女は葛藤の末、勇気を出す事を選ぶ――。


――二条乃梨子は自身の震える手を、藤堂志摩子の彫像のような白い手の上に重ねた。


「……乃梨子?」

驚いたように振り返った志摩子に怯む事なく、乃梨子は力強く言った。

「志摩子さんは悪くない」

自分に向けられた真摯な眼差しに、志摩子の表情は驚きから、やがて慈愛へと変わる。

「乃梨子……。もしもあなたがいなければ、私はとっくの昔に消えていたかもしれない」
「え? 志摩子さんと私が出逢ったのって二ヶ月前だよ?」

キョトンとする乃梨子に、志摩子はただ黙って微笑みを返すだけで。
この奇妙なにらめっこ≠ヘ乃梨子が赤くなって目を逸らした事で、志摩子の勝利に終わった。

「あ〜……そ、そうだ! 私お茶のおかわり淹れるね!」

ガタガタと椅子を鳴らしながら、慌てて流しに向かう乃梨子の背中に、志摩子はそっと呟いた。

「ありがとう……乃梨子」

志摩子はてきぱきとお茶を淹れる乃梨子から、ふと視線を別のところに向けた。
視線の先にあるのは、いつも祐巳が座っている席。そしてここでは″タる人がいない、二つの空席。

「やっぱり令さま達が転校≠オてしまったあの時から、この世界はもうダメだったのかもしれないわね……」
「――ん? 何か言った? 志摩子さん」
「いいえ。なんでもないわ。乃梨子」


二人だけの昼食会は、予鈴が鳴る寸前までつづいた。





(コメント)
杏鴉 >連投失礼します。(No.15063 2007-05-09 06:40:23)

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