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刻を止めて  No.3486  [メール]  [HomePage]
   作者:杏鴉  投稿日:2011-03-30 20:36:49  (萌:1  笑:1  感:18
これは以前掲載したお話を別視点から描いたものです。
先にこちら↓をお読みいただかないと、理解しづらい迷惑な代物です。

『祐巳side』
【No:2557】【No:2605】【No:2616】【No:2818】【No:2947】【No:2966】【No:3130】【No:3138】【No:3149】【No:3172】(了)

『祥子side』別名:濃い口Ver.
【No:3475】【No:3483】→これ。





私は朝が苦手だ。
以前からそうだったけれど、数日前からは大嫌いになった。

目覚めた私はぼんやりした頭のまま鏡の前に立つ。
寝ぼけたままで構わない。
どうせ鏡を見た瞬間にはっきりと目が覚めるのだから。
ナイフでこそげるように、その暴力的な覚醒が私の精神を削り取っていく。

目の前の鏡に映っているのは間違いなく私だ。
けれど私ではない。

私であって私ではない、かつての自分を私は睨みつけた。
同時に、鏡の中にいる昔の私も同じようにこちらを睨みつけてくる。
癪に障る顔だ。
昔の私は、怒りの感情を思いきり私にぶつけている。
けれど分かっている。
その目に潜む、怯えを。

昔の私に背を向けた私は体重計を拾い上げると、力いっぱい床に叩きつけた。
派手な音がした。きっともう使い物にならないだろう。
構わない。どうせ使う必要なんてないのだから。
体重を量るまでもなく、昨日よりも私の身体が若返っているのは明らかだった。

そして私は今日も母に連れられ、病院へと向かう。
減少しつづける身長と体重の記録をつける為だけに。
なんて無意味な行動だろう。
けれど私がこの無意味な行動をやめる事はない。

肉体の時間だけが巻き戻っていく。
私の身に降りかかったこの不条理な現象は、私から自由を奪った。
今や無意味な病院通いだけが、外に出られる唯一の機会になっていた。

仕方のない事だとは分かっている。
世間の好奇の目から私を守る為には、なるべく外出させない方がいいのはあたりまえだ。
けれど……





病院から帰った私はすぐに自室にこもった。
病院へ行く時以外は、極力自分の部屋から出ないようにしている。
母はそれをやんわりと注意してきたけれど、私は気付かないふりをしつづけていた。
私はこの姿で人と関わるのが嫌だった。

今この家には幼い頃から見知っている使用人しかいない。
私は彼らと顔を合わせたくはなかった。
もちろん彼らが小笠原家を裏切るようなまねをするなんて思っていない。
けれど、私を見る彼らは決まって悲しそうな目をするから、それが辛かった。
それだけ大事に思われているのも、自分が恵まれた環境にいる事も分かっている。
けれど……

家を出る前に叩き壊し、放置していたはずの体重計がどこにもない。
綺麗さっぱり片付けられていた。
何事もなかったかのように。

まるで籠の中の鳥だ。
とてもとても大切に飼われている籠の鳥だ。
多少のワガママは許してもらえる。でも籠から出るのは許されない。
もし逃げ出したとしても、自力では生きていけない籠の鳥。

……私はこのまま死ぬのだろうか。
だとすれば死因はなんだろう。老衰のまったく逆は何て言えばいい?
自虐的な笑いがこみ上げてきて、誰もいない部屋でひとり身体を震わせた。
ばかばかしくなった私は笑うのをやめ、仰向けにベッドに倒れこんだ。

朝、目覚めるたびに昨日よりも幼い自分になっている。
ひょっとすると私の死は、それほど苦しくはないのかもしれない。
おそらく眠っている間に誕生前まで若返って、そしてわけも分からぬまま死を迎えるのだろう。

人はいつか必ず死ぬ。
けれどそれは、もっとずっと遠い日に訪れる爐い弔瓩任△辰燭呂困澄

いつの間にか、両目から涙があふれていた。
私はそれを拭いもせず、ただ流れるにまかせていた。

……死にたくない。

ぎゅっと閉じたまぶたの裏に思い出が映し出される。
ずいぶんと気の早い走馬灯だ。
様々な情景がゆっくりと巡っていく。
私の人生の中で、もっとも印象深い高校生活の思い出が現れては消えていく。

私の死因は隠されるだろう。
当り障りのない病死か、あるいは事故死とでも公表されるに違いない。
そして友人や仲間たちも私の偽りの死因を信じ、悼んでくれるのだろう。
仕方のない事だとは分かっている。……分かってはいるけれど。

「……祐巳に逢いたい」

口にした途端、涙が嗚咽に変わった。

あの愛らしい笑顔を見たい。
私を呼ぶ声を聞きたい。
この手で触れたい。

このままいけば、私は近いうちに死ぬだろう。
それはどうしようもない事なのかもしれない。
それならせめて、祐巳にだけは真実を知っていてほしかった。

「祐巳……祐巳……っ!」

一目だけでもいいから逢いたい。
もう二度と逢えなくなるかもしれないから。





数時間後、私はリリアンの正門近くにいた。
もちろんぼんやり立っているような目立つ行為はしていない。
車の後部座席に身を潜ませ、通りかかるリリアン生に気付かれないように注意しながら、祐巳が出てくるのを待っていた。

「巻き込んでしまってごめんなさい」

運転席に座る松井に私は詫びた。
祐巳に逢う為にはどうしても車が必要だった。
身体は中等部の生徒並みになっていても、顔は小笠原祥子のままなのだ。
私を知るリリアン生に見つかるとまずい事になるのは明らかだった。
だから私は松井に助けを求めた。
家を抜け出す際も、松井ならば用事を頼まれたとでも言えば疑われず車で家を出る事ができる。
その車に私が潜んでいるとは誰も思わないだろう。

「とんでもありません。お嬢さまのお役に立てて、私は嬉しく思います」
「ありがとう」

このことが父や祖父にバレたら、松井はただでは済まないだろう。
それを分かったうえで彼は私に協力してくれている。
普段部屋にこもりきりな私の不在はすぐにはバレないと思うけれど、もしも松井が責任を取らされそうになったら全力で守ろう。
彼はそれだけの事を私にしてくれたのだから。

「お嬢さま。福沢さまがお見えになりましたよ」
「そう。祐巳がバス停に着く前に横につけてちょうだい」





「どう話せばいいかしらね……」

言葉に詰まる私の目の前で、祐巳がぽかんとしている。
私が小笠原祥子である事は理解できているけれど、納得はできていないようだ。
当然だろう。
私だってお姉さまが突然自分よりも年下になっていたら、とても納得なんてできない。

とはいえ、祐巳。その顔はどうかと思うわ。
生まれて初めて3D映画を見た子どもみたいに、祐巳は目も口もまん丸にしていた。

胸の奥がくすぐったい。
そこにはどす黒くて重いモノが詰め込まれていたはずなのに、祐巳に逢った途端、ふわふわの羽に変わってしまったようだ。

祐巳に逢えてよかった。
私の妹が祐巳でよかった。
心からそう思う。

ふと、私は祐巳に呼んでもらいたくなった。

「ねぇ、祐巳。私は誰?」
「へっ!?……えっと……お、お姉さま……?」

その落ち着きのない返事がいかにも祐巳らしくて、私は久しぶりに微笑んだ。
すると、私につられたのか祐巳も嬉しそうに笑ってくれた。
祐巳の笑顔が見れてよかった。……これが最後だとしても。

私は私の身に起こっているすべてを祐巳に話した。

「朝、目が覚めるたびに思うの。悪い夢だったんじゃないかって。でも……、期待して鏡を覗いてみても、目の前にいる私はいつも昨日より幼くなっている……」
「お姉さま……」

話す事で、これが間違いなく現実なのだと改めて思い知らされる。
私の身体はみっともなく震えだした。
止めなければ。
そう思う気持ちとは裏腹に、身体の方は正直に恐怖を訴えつづけている。

震える私の手に、何か温かなものが触れた。
祐巳だった。

「お姉さまっ……お姉さまぁっ」

祐巳が私の手を握りしめている。
必死に私の震えを止めようとしている。
……私は恐怖でどこかおかしくなってしまったのかもしれない。

嬉しい。

こんな状況にもかかわらず、私は喜びを感じている。
祐巳のやわらかな手が。祐巳の温もりが。祐巳の心が私に向いているのが。
私はどうしようもなく嬉しい。

どうかしている。
私の理性が警鐘を鳴らす。
『太陽を抱きしめる愚か者は、跡形もなく燃え尽きる』と。

それでもいい。
誰にも知られず消えるくらいなら、灰も残さず燃やし尽くしてほしかった。
けれど私を燃やし尽くした後、太陽はどうなるのだろう。
これまでと変わらず、みんなを照らしつづける太陽のままでいてくれるだろうか。
もしも太陽がその輝きをなくしてしまったら……私は自分自身を赦せない。
それだけが、脆弱な理性を味方する唯一にして絶対の懸念だった。
やはり私は祐巳の傍にいてはいけない人間なのかもしれない。

「……本当はね。誰にも会ってはいけないと言われていたの。もちろん話す事も。でも、祐巳にだけは伝えておきたかったの。考えたくはないけれど、もしかしたら私は――」
「お姉さまっ!」

強く遮られた。
私の言葉を耳に入れないようにする為か、祐巳は激しく首を振っている。
そんな祐巳の姿に、私は何も言えなくなってしまった。

「待っていますから……私、お姉さまの事、ずっと待ってますから。……だから負けないでください」

私は自分の事ばかりを考えていた。
私の現状を知った祐巳が、どれほど心を痛めるのかすら気が付かないほどに。
泣きそうになっている祐巳を安心させたくて、私は精一杯の強がりを言った。

「祐巳。リリアンで会いましょう。私は必ず元の姿に戻ってみせる。だからそれまで待っていてちょうだい」

祐巳は私の大好きな笑顔で「はい!」と返事してくれた。
私の演技力も捨てたものではないらしい。

いつの間にか車は祐巳の家に着いていた。
車を降りようとする祐巳を、私はつい呼び止めてしまう。
これが最後かもしれないから、

「タイが曲がっていてよ」

私は祐巳のタイに手を伸ばした。





杏鴉 > (実質的に)連投すいません。 (No.19920 2011-03-30 20:39:22)
浮かれ野郎 > 祥子様、目線…良い…。次が楽しみだぁ! (No.20115 2011-07-09 16:12:24)
ke > 続きを待っています (No.20123 2011-07-29 13:58:16)
BM  > 途中で終わりなんて、ないですよねぇ…?     続き、待ってます(>_<)  (No.20149 2011-08-29 14:33:17)
BM  > 途中で終わりなんて、ないですよねぇ…?     続き、待ってます(>_<)  (No.20150 2011-08-29 15:28:03)
杏鴉 > 浮かれ野郎さま。楽しみにしていただいてありがとうございます。ようやくつづきを投稿できました。良かったらまた見てやってくださいませ。 >keさま。コメントありがとうございます。できましたよ!やっと!まだ待っていてくださっているなら見てやってくださいませ。 >BMさま。まだまだ終わりませんよー、私の妄想は!(←違)お待たせして申しわけありませんでした。やっとつづきが書けましたので良かったら見てやってください。 (No.20152 2011-08-29 21:20:41)

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