| 祐巳大好き!  No.3877  [メール]  [HomePage] 作者:ヘススナバス
			 投稿日:2018-04-28 03:28:17
			 (萌:2
			 笑:0
			 感:4)
 
 
			【No:3868】【No:3869】【No:3871】【No:3872】【No:3875】の続き。マリみてと城下町のダンデライオンのクロス的な何か。
 一巻の終わり
 
 
 
 文化祭当日。
 私は茜ちゃんとクラスの店番をしていた。
 「茜ちゃん大丈夫?」
 
 「だ、だ、だいじょうぶ!じゃないかも…」
 
 「じゃあ応対は私がするから茜ちゃんはノートに名前書いてもらってね。」
 
 「わ、わかった。」
 
 何故人見知りの茜ちゃんがこんなことをしているのかというとクラスのみんなに「茜さんがいると人が集まるからお願い!」と頼まれてしまったからだ。
 
 ただ茜ちゃんの人見知りさは知られているので私とセットにしたということらしい。
 
 「茜ちゃんそのままだと選挙の時大変そうだね。」
 
 「私は王様なんてなるつもりないもん…」
 
 そう言って茜ちゃんは机に突っ伏した。
 
 「そうそう、この後祥子様とどっか行ったりしないの?」
 
 「一応誘われたけど茜ちゃん置いていけないよ。お昼頃私たちの展示見に来るって言ってたかな。」
 
 「そこは祥子様を優先しなさい!私の面倒は蔦子さんが見ます。」
 
 「え!?私!?」
 
 茜ちゃんがびしっと指差した方向にはカメラの調整をしていた蔦子さんがいた。
 
 「んーまあいいでしょう。その時間やっておけば祐巳さんの劇は見に行けそうだしね。」
 
 「あ、祐巳さん。祥子様と一緒に回るんだったらぜひ写真部に行ってちょうだい。あの写真のパネルがあるから。」
 
 「わかった。ふたりともありがとね。」
 
 私は二人のあたたかさに感謝しながら接客を始めた。
 
 そうこうしているうちにお昼ごろになった。
 
 「ごきげんよう、祐巳。」
 
 声をかけられたので顔を上げたらそこには祥子様がいらっしゃった。
 
 「ご、ごきげんよう!祥子様!」
 
 「少し見させてもらうわね。」
 
 祥子様がそう言って歩き出そうとした。
 
 「あ、祥子様。見終わったらここにサインお願いします。」
 
 「ええ、わかったわ。」
 
 茜ちゃんのお願いに祥子様はそう答えた。
 
 祥子様が見て回ってサインを終えると
 
 「祥子様。祐巳はこれから休憩なのでご自由に連れまわしてください。」
 
 茜ちゃんがそう言った。なんか私はペットみたいな扱いだ。狸のペットとはなかなか珍しい。
 
 「いいのかしら?祐巳はあなたが心配だから残りたいって言っていたけれど。」
 
 「ええ、だいじょうぶです!蔦子さんに助っ人を頼んだので。」
 
 そこで蔦子さんが登場した。
 
 「安心してください。しっかり面倒は見ておきますから。」
 
 蔦子さんは私と祥子様にそう言った。
 茜ちゃんもペットみたいな扱いである。
 茜ちゃんとは同じツインテールであったり似ている所があるのかもしれない。
 
 「では、祐巳行きましょう。」
 
 「はい!」
 
 そういって祥子様と一緒に出ようとすると
 
 「あ、そうだ。中等部で岬の一人が劇やってるみたいだからよかったら私の代わりに見てあげて。」
 
 茜ちゃんがそう声をかけてきた。
 
 「祥子様、時間って大丈夫でしょうか?」
 
 「ちょっとくらいなら遅刻してもいいでしょう。こういう日ですもの。」
 
 そう言って祥子様は笑った。
 
 「ありがとうございます!じゃあ早速行きましょう!」
 
 私は祥子様の手を取って歩き出した。
 
 (しまった!ついいつもの癖で手を…)
 
 茜ちゃんも人見知りがなければ活発なので手を引っ張られたり、逆に人見知り状態の時は私が引っ張ったりしていたのでつい手をつかんでしまった。
 
 恐る恐る祥子様の顔を見ると特に気にした様子はなさそうだった。
 
 「どうしたの祐巳?行くのではなくて?」
 
 「あ、はい。」
 
 私たちは手をつないだまま文化祭を回ることになった。
 
 
 「あ、始まりますね。」
 
 私と祥子様は並んで劇を見ている。
 
 「あ、岬ちゃんだ。わかっていたけど私より断然うまい…」
 
 助っ人を頼まれるような人だからうまいのだろうとは思ってたけど私とはレベルが違った。
 
 「あなたにうまい演技なんて誰も望んでないわよ。あなたは堂々と自分の演技をすればいいの。」
 
 私がへこんでいると祥子様がそう言ってくださった。
 
 ちょっとだけ元気になった。
 そこで舞台をしっかり見ると1人だけはるかに輝いて見える子がいた。
 
 「うわーあの子すごいですね!」
 
 「ええ、女優を目指しているそうよ。」
 
 「お知り合いですか?」
 
 「親戚の子よ。」
 
 そう言えばずっと前に岬ちゃんが演劇部に祥子様の親戚の縦ロール先輩がいるって言ってたような。
 もう一度舞台を見るが今は演劇用の髪型なのか縦ロールではなかった。
 
 そうこうしていると演劇は終わった。
 
 「それでこれからどうするの?」
 
 「写真部に行きませんか?あの写真がパネルになってるらしいので…」
 
 「ああ、あの始まりの写真ね。」
 
 祥子様はクスっと笑った。
 
 「祥子お姉様!」
 
 祥子様と話しているとどこからかそう言う声が聞こえてきた。
 え?まさか実は祥子様に妹が?
 やっぱりだれでもよかったのだろうか…
 
 「私には妹いないわよ。妹にしたい人はいるけれど。」
 
 祥子様が私の表情を読んだのかそうおっしゃった。
 
 「そうなんですか…ちなみに妹にしたいのはどういう方なんですか?」
 
 「秘密よ。祐巳、今日の劇が終わったら時間をくれるかしら?」
 
 「はあ。」
 
 私は怒涛の展開で変な返事をしてしまった。
 
 「祥子お姉様!無視するなんてひどいですわ!」
 
 「ごきげんよう、瞳子ちゃん。いい劇だったわ。」
 
 瞳子ちゃんと呼ばれたプリプリ怒っていた。
 
 「そちらの方がご噂の福沢祐巳様ですわね。ごきげんよう。」
 
 なんか敵意剥き出しな気がする。
 
 「ご、ごきげんよう。噂って…?」
 
 「祥子お姉様の妹候補ですもの。中等部にも噂くらい流れてきますわ。」
 
 ああ、そういう噂か。
 
 「ゆみ姉!来てくれたんだ!」
 
 瞳子ちゃんと話していると岬ちゃんがやってきた。
 
 「うん。かっこよかったよ!」
 
 「えへへ。ありがと。」
 
 「瞳子ちゃんもものすごくひきこまれる演技ですごかったよ!」
 
 「はあ、ありがとうございます。」
 
 なんか瞳子ちゃんが毒気の抜かれた顔でお礼を言った。
 
 「あ、祥子様。初めまして櫻田岬です。」
 
 「こちらこそ。小笠原祥子よ。姉である奏さんにはいろいろお世話になってるわ。」
 
 「あ、そうだ。瞳子ちゃん初めまして。福沢祐巳です。」
 
 「松平瞳子ですわ。」
 
 そう言って私たちは自己紹介した。
 
 「ゆみ姉の劇も見に行くからねー瞳子様と一緒に!」
 
 「え?私もですの?」
 
 「祥子様の劇見たいって言ってたじゃないですかー一緒に見ましょうよ!」
 
 そう言って岬ちゃんは瞳子ちゃんに抱き着いていた。
 
 「ええい!うっとうしい!わかったから離れなさい!」
 
 「じゃあとういうことでゆみ姉またあとでね!祥子様、ゆみ姉のことよろしくお願いします。」
 
 そう言って瞳子ちゃんと岬ちゃんは去って行った。
 
 「元気な子ね。」
 
 祥子様は笑って言った。
 
 「はい。それにいい子ですよ。」
 
 「そのようね。」
 
 瞳子ちゃんと岬ちゃんが話をしているのを見てそう言った。
 
 「じゃあ私たちも行きましょうか。」
 
 「はい!」
 
 そうして私たちも写真部へ向かっていった。
 
 
 「遅い!」
 
 紅薔薇様に二人して怒られてしまった。
 
 「もう逃げるとは思ってはいなかったけど万が一があるかと思って心配だったわ。」
 
 「すみませんでした。」
 
 ふたりで頭を下げた。
 
 「まあいいわ。急いで準備して頂戴。」
 
 私は黄薔薇様に髪を結ってもらった。
 
 「そういえば祐巳ちゃん兄弟っている?祐巳ちゃんに似た人が葵さんと奏ちゃんに連行されていたけど。」
 
 「はい。弟がいます。」
 
 連行って…無理やりつれて来られたのか。
 
 「はい。できたわよ。」
 
 「ありがとうございます。」
 
 「じゃあ頑張ってね。」
 
 そう黄薔薇様に言ってもらい劇の始まる時間になった。
 
 
 まさか櫻田一家が家族総出で見に来るとは思わなかった。
 現王様であるみんなのお父さん総一郎さんに奥さんの五月さん。
 小等部の光ちゃんや幼等部の栞ちゃん。
 花寺の小等部の輝君まで来るとはね。
 
 隣にはうちの家族もいた。
 なぜか祐麒は葵様と奏様に挟まれてたけど。
 
 その光景を見た瞬間セリフが飛びそうになったけどなんとか耐えた。
 
 「あなた一人でなにしてるの?」
 
 「ちょっと黄昏てました。」
 
 今日を振り返っていると祥子様がやってきた。
 
 「茜さんや蔦子さんはどうしたの?」
 
 「茜ちゃんは奏様に連れていかれました。蔦子さんは多分その辺で写真撮っています。」
 
 「なるほど…祐巳ちょっと歩かない?」
 
 そう言って祥子様と共に歩き出してマリア像の前まで来た。
 
 「すべてはここから始まったのね。」
 
 「ええ、そうですね。」
 
 「優さんに婚約破棄を伝えたのもここだし何か縁があるのかもしれないわね。」
 
 祥子様はそう言って笑った。
 
 「祐巳、私の妹になってくれないかしら?」
 
 「…一つ聞かせて貰っていいですか?」
 
 「いいわよ。」
 
 「どうして私なんですか?」
 
 「あなたのことが好きでどうしても必要だからよ。」
 
 その目に嘘はなさそうだった。
 
 「私はよく茜ちゃんの代わりに伝言だったり要件を聞いたりしてきました。それで茜ちゃんありきの人間なんじゃないかって悩んでました。私はだれかの代わりに過ぎない人間なんじゃないかって。」
 
 「…」
 突然話し出したので祥子様はちょっと呆気にとられているが私は続ける。
 
 「そういうことが積み重なってある日茜ちゃんに言ったんです。私はあなたの代わりなんかじゃない!って。あ、小さいころの話ですよ。」
 
 「それは茜ちゃんのおかげで解決したんですけど今でも誰かの代わりっていうのがちょっぴり苦手なんです。」
 
 「だから祥子様の代役にされそうになったこと、誰でもいいからという精神でロザリオを渡そうとしたこと。実はショックでした。」
 
 「…ごめんなさい。」
 
 「もういいんですよ。祥子様は誰かの代わりとしてではなく私をしっかり見てくださったようなので。」
 
 そして私は祥子様に笑顔でこう言った。
 
 「不出来な妹ですみませんがよろしくお願いします。」
 
 
 私は帰り道、奏様と茜ちゃんに襲われ事の顛末を話させられた。
 どうやら奏様は祥子様に事前に伝えられていたらしくそれで茜ちゃんを連れ去ったようだ。
 
 「祐巳もついに姉が出来たのねーあんな姉だけど。」
 
 なぜか祥子様に対する評価が厳しい奏様である。
 
 「あんなって…祥子様は優しいですよ。だいぶ厳しい所もあるけど…」
 
 「はいはい。あ、祐巳は今日家に来なさい。姉さんが祐巳に姉が出来た記念に料理作ってくれているらしいわ。」
 
 「事前に準備されてたみたいだけど私が断ってたらどうしたの?」
 
 「断るなんて誰も思ってないわよ。ところで茜はさっきからだまってどうしたの?」
 
 「え?なんでもないよ。」
 
 「茜ちゃん。私に姉が出来ても茜ちゃんの代わりは誰もいないし唯一無二の親友だよ。」
 
 「へ?うん!そうだね!祐巳大好き!」
 そういって抱き着かれた。
 
 私はこの人見知りの親友と賑やかなその家族。そして今日得た姉と共にずっと楽しく暮らしていけたらいいなと思った。
 
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