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貴方との幸せな時間自重しない  No.3657  [メール]  [HomePage]
   作者:杏鴉  投稿日:2012-06-02 00:36:58  (萌:0  笑:0  感:18
これは以前掲載したお話を別視点から描いたものです。
先にこちら↓をお読みいただかないと、理解しづらい迷惑な代物です。

『祐巳side』
【No:2557】【No:2605】【No:2616】【No:2818】【No:2947】【No:2966】【No:3130】【No:3138】【No:3149】【No:3172】(了)

『祥子side』別名:濃い口Ver.
【No:3475】【No:3483】【No:3486】【No:3540】【No:3604】→これ。





祥子はひとり闇の中にいた。
何も見えず、何も聞こえないが不安を感じたりはしていない。

この場所には覚えがあった。
何も見えていないのにおかしな話だが、確かに祥子はこの場所を知っていた。

「どうせ近くにいるのでしょう? 出てらっしゃい」

闇に向かって祥子が言うと背後で誰かが笑った。
子どもの声だ。

可愛らしい笑い声の裏に潜む悪意を感じて祥子は不愉快になった。
しかめっ面のまま振り返る。
だが、真っ暗で子どもの姿は見えない。
この辺りだろうと見当をつけ、祥子は斜め下に視線を向けて言う。

「また会ったわね。そろそろまともに顔を見せる気になったのかしら?」

笑い声がぴたりとやんだ。

「あんたなんか大キライよ」

いつの間に移動したのか、声は背後から聞こえた。
ため息をひとつついた祥子がまた振り返っている間にも、子どもは辛辣な言葉を投げつけてくる。

「卑怯でワガママで強欲で。よく恥ずかしくならないわね」
「あなたこそ卑怯ではなくて? 言いたいことがあるなら面と向かっておっしゃい」

平手打ちのような祥子の言葉に子どもは黙り込んだ。
怒りの感情が漂ってくる。

「……もうすぐよ」

憎しみを込めた低い声が闇の中から不気味に届いた。
これがついさっき可愛らしい笑い声を上げていた子どもかと疑いたくなる。
しかしここには祥子と猗狃瓩靴存在しない。

「せいぜい、いい気になっているといいわ。……その時がくるまでね」

声が遠ざかっていく。
何も見えないこの状況では追いかけるのはとても無理だった。
祥子は闇の中に取り残された。

以前、祥子はあの子どもの姿を一瞬だけだが見た。
知った顔だった。
しかしどうして猗狃瓩冒まれているのかまでは分かっていない。

――立ち尽す祥子の耳にまた声が聞こえた。

猗狃瓩戻ってきたのかと思ったが違う。
聞こえるのは嘲笑ではなく、泣き声だった。

耳を澄ませてみる。
泣き声の主は誰かを呼んでいるようだった。

「……ぇさま」

ハッとなる。
この声は……

「祐巳?」

問いかける祥子の声に反応するように遠くで慟哭が聞こえた。
気付けば祥子は駆け出していた。
闇の中で走るのは危険だ、なんてあたりまえのことは考えの外だった。
それよりも、祐巳が泣いているという事実が祥子の足を急がせた。

「祐巳! どこなの!?」
「お姉さまぁ……っ!」

先ほどよりも近くで祐巳の悲痛な叫びが聞こえる。
闇が疎ましい。
自分から祐巳を隠そうとする闇を祥子は睨みつけた。

――絶対に見つける。
誰がどこにあの子を隠したとしても、私は必ず見つけてみせる!

不意に眩い光が射し込んだ。

強烈な光が闇を白く変えていく。
目を開けていられなくなった祥子は祐巳の名を叫んだ。
何度も何度も。
けれどもう、誰の声も聞こえなかった――。





目覚めた後も、私はじっとしたまま動かなかった。
完全に覚醒するのにはいつも時間がかかる。

緩慢な動作で自分の手を見る。
……どうやらまだ自力で活動できる身体であるらしい。
安堵とも落胆ともとれるため息が漏れる。

傍で何かが動いた。
少し驚いたけれど、すぐに思い出して笑みが浮かぶ。
そうだ。祐巳が隣で眠っているんだった。
今日だけじゃない。
これから先もずっと、私が眠る隣にはいつも祐巳がいてくれるのだ。

幸せを感じながら私はそっと祐巳の寝顔を盗み見た。
その瞬間、浮かれた気分はどこかへ吹っ飛んでいった。

――祐巳が泣いている。

そんなにも自分と同衾するのが嫌だったのだろうか。
それとも眠っている間に、私が何か良からぬことをしでかしてしまったのだろうか……。
どんどん嫌な考えが浮かぶ。そしてそのどれもが祐巳が泣いている理由としてあり得ると思えた。
血の気が引いていく。

祐巳はぎゅっと目を閉じていて私を見ようともしない。
拒絶されている気がして声をかけることすらできなかった。

「ぉ姉、さま……」

ビクリと身体が震える。
次にくるであろう非難の言葉に怯え、身を竦めた。
けれどいつまで経っても祐巳はそれ以上何も言わなかった。

「……祐巳?」
「お姉さまぁ……」

おそるおそる呼びかけると、祐巳も私を呼んだ。
まるで私の姿を見失っているように。

そこで気付く。
もしかすると祐巳はまだ眠っているのではないだろうか。

「祐巳。目を開けてちょうだい」
「うぅ……お姉さまぁ」

祐巳は私の声を無視して私を求めている。
やはりまだ夢の中にいるのだ。

そこでようやく思い出す。
祐巳が私に会いにきてくれた時に言っていたではないか。
最近とても怖い夢を見ると。

あれは強情を張る私を説得する為の方便などではなく、本当のことだったのだ。
こんなに辛そうにして可哀想に。
早く起こしてあげよう。

「祐巳。祐巳」
「うわぁぁ……」
「起きなさい」
「お姉さまぁ……ぐずっ」

ダメだ。声をかけるだけでは起きない。
私は祐巳の肩を強めに揺すった。

「――祐巳。起きなさい、祐巳」
「ふぇっ?」

ようやく起きてくれた。
けれどまだ覚醒しきってはいないらしく、なんだか混乱しているようだ。
私を見るどこか虚ろな目が涙でキラキラ光っている。
不謹慎だとは分かっているが……、泣いている祐巳を綺麗だと思ってしまった。

つい見惚れていると、突然祐巳が私をベッドに押し倒してきた。
残念ながら喜びよりも苦しさの方が大きかった。

「祐巳……苦しい……」
「へ? あぁっ!? すすすみませんお姉さまっ!」

祐巳は私を挟むようにベッドに手をつき身体を離した。
目が覚めたらしい祐巳はしきりに謝っている。
苦しくて乱れていた息を整えながら自問してみる。

もしも今、身体が元のままだったなら私はどうしていた――?

寝ぼけて飛びついてきた祐巳を、
泣きながら自分の腕の中に飛び込んできた祐巳を、
私はどうしていただろう。

……姉として相応しい振る舞いをできたとはとても思えない。
おそらくは祐巳の真意を確かめるだけの理性もなくし、自分勝手に思いを遂げていただろう。
力で勝っていた元の私にはそれが可能だった。

今初めて子どもの姿になっていて良かったと思った。
けれどそれと同じくらい、子どもの姿でいることを残念に思っていた。

私は穢らわしい人間だ……。

「お姉さま大丈夫ですか? どこか苦しいんですか? ごめんなさい。本当にごめんなさい」

見上げると祐巳が悲しそうに、心配そうに、謝っている。
自己嫌悪で顔をしかめていたのを誤解しているらしい。
祐巳の頬を涙が伝っている。
これは夢で流した涙だろうか、それとも私を心配して流した涙だろうか。
そんなことを思いながらもやさしく拭ってあげると、祐巳はほっとしたように表情を緩めた。

「どうして泣いていたの?」
「その、怖い夢を見てしまって……」

私はあることが気になっていた。
猊櫃ぬ喚瓩鮓て泣いていた祐巳は寝ている間、ずっと私を呼んでいた。
つまりそれは、夢の中の私が祐巳を泣かせたということではないか。

私の邪な想いが、穢らわしい視線が、悪夢という形で祐巳に害を与えているのではないだろうか。

「どんな夢って聞いてもいい?」

内心の動揺を覚られないよう私は静かに尋ねた。
祐巳は答えあぐねている。
よほど言い辛い内容なのか……?
いったい何をしたんだ夢の中の私よ。
聞くのが怖くなってきた。

たとえば、山百合会の仕事でミスをした祐巳を叱っていた私が化け物に変化して祐巳を追いかけ回すだとか、そんな内容なら「おかしな夢ね」と笑い飛ばせる。
けれど、もしも私が抱いている邪な想いをそのまま実行しているような内容だったら、
それを祐巳が悪夢だと思っているのだとしたら……

「言いたくないなら無理しなくていいのよ」

私は卑怯な言い方で話を終わらせようとした。
けれど祐巳は一度唇をきゅっと結ぶと、ゆっくり話し始めた。

「夢の中で私はひとりぼっちだったんです。寂しくて、お姉さまに会いたくなったんですけど……」

無意識なのか触れたままの私の手に祐巳が頬をすり寄せてくる。

「お姉さまはどこにもいらっしゃらなくて……。でも、私を呼んでくださる声が聞こえて、一生懸命追いかけたんです」

夢の中での気持ちを思い出したのか、祐巳の目にまたじわりと涙があふれてくる。

「それなのに……走っても走っても、お姉さまに追いつけなくて……」

どうか教えてくださいマリア様。
この子を誰にも渡したくないと思うことは
この子以外には何もいらないと思うことは
罪なのでしょうか?

「私はここにいるでしょう? だから泣かなくていいのよ」
「でも……」

祐巳が愛おしい。
誰よりも。何よりも。
その気持ちのままに抱き寄せ頭を撫でる。

「大丈夫よ。現実の私はちゃんとあなたの傍にいるわ」
「お姉さま……」
「あなたをひとりぼっちになんて、私がすると思って?」

ひとりぼっちになりたくないのは私の方だ。
離れたくない。
祐巳が傍にいてくれるのなら何を失ってもかまわない。
私は祐巳を――

「お姉さま大好き」

……祐巳のバカ。
そんなこと言ったら、もう私から逃げられなくなるのに。

もぞもぞしだした祐巳の頭をがっちりとホールドする。
放してなんてあげない。

「あの、お姉さま?」

聞こえない。

「えっと、あの」

控えめにじたばたしていた祐巳だったけれど、やがてあきらめたのか大人しくなった。
頭を撫でてあげるとくすぐったそうに小さく笑った。

絶対に誰にも渡さない。
大切な、私の可愛い……祐巳。

――ふと、何かが心に引っかかった。
何か大事なことを忘れている気がする。

けれど私はそのことについて考えるのをやめてしまった。
今はただ、祐巳の温もりを感じていたい。
それ以上に大切なことなんて、あるとは思えなかった。





病院での検査を終え、私は家に戻っていた。
検査の結果は昨日と同じだった。
祐巳が訪れた日から、私の若返りは止まっている。
元の身体に戻る兆候も見られないからあまり楽観はできない。
けれどすぐそこまで迫っていた死がほんの僅かながら遠ざかったように思えて、気持ちは少し落ち着いていた。

祐巳はまだ学校から帰っていない。
昼過ぎだから当然なのだが、妙に寂しく思う自分がいる。

……私は祐巳に依存しすぎているのではないだろうか。

こうしてひとりきりになって考えてみると気付く。
明らかに今の私はいつもの私ではない。
尋常でない状況におかれ精神が不安定になっているせいだとは思う。
けれどそれにしても、祐巳の前に立つ私は冷静さを欠きすぎていやしないだろうか……。

祐巳はこれから先もきっと私を支える為に傍にいてくれるだろう。
私との時間を最優先にした生活を送るのだろう。
正直に言えば、嬉しい。
これ以上ないくらいの幸せだ。
けれど……、

本当にそれでいいのだろうか。
祐巳は優しいからそんな素振りを見せたりはしないけれど、相当の負担がかかっているはずだ。

私はあの子の優しさに甘えすぎている。

やはり祐巳とは距離をとった方がいいのかもしれない。
今ならまだ間に合う。
私があの子の良き姉でありつづけるためにも、辛いけれど祐巳には実家に戻ってもら――




気付くと書庫にいた。
どうしてこんなところにいるのだろう?
確か病院から帰った私は軽く食事をした後、自室で過ごしていたはず……。

まぁいい。
せっかくだから何か本を持っていこう。
部屋で読書しながら祐巳を待つのも悪くない。

……祐巳に伝えなければいけないことがあった気がする。
けれど思い出せない。
つい先ほどのことだろうに、この場所に来た記憶と同様にそれは私の頭の中からすっぽりと抜け落ちていた。

いくら考えても思い出せず、私はとうとうあきらめてしまった。
大切なことならきっと祐巳の顔を見れば思い出せるだろう。
そう信じて。

私は手近にあった本を適当に取り、自室へと向かった。
ここにいたのでは祐巳が帰ってきてもすぐには気付けない。
けれど自室にいれば誰かが知らせてくれるだろう。

昨日祐巳がしてくれたように、玄関で出迎えて「お帰りなさい」と言ってみようか。
そうしたら祐巳はどんな顔をするだろう。
想像しただけで楽しくなってきて私は笑みを浮かべた。

――早く帰ってきてほしいな。





bqex > 結末がわかってるのに、こっち、怖い(笑) (No.20585 2012-06-02 01:16:42)
杏鴉 > コメントありがとうございますbqexさま。こっちはいろいろな意味で濃い口ですから(笑) (No.20587 2012-06-02 01:44:08)
ピンクマン > ひさしぶりに動きましたねここ^^ (No.20613 2012-06-06 21:37:10)
杏鴉 > 皆さんお忙しいんでしょうね。……私の場合は単に遅筆なだけですが(笑) (No.20614 2012-06-06 23:41:23)

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