がちゃS・ぷち

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No.3865
作者:奏葵
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2016-08-03 00:04:19
萌えた:37
笑った:3
感動だ:8

『照れると可愛くなる』

マリア様がみてるif
  太陽と聖女


第一部 −【No:3853】【No:3854】【No:3856】【No:3857】【No:3858】【No:3859】【No:3860】【No:3861】

第二部 −【No:3862】【No:3863】【No:3864】


お泊り会があった翌日、祐巳はいつもより早く登校していた。
勉強会で使った本を返すためだ。
図書館に着き受付に向かった。
すると受付にはあの図書委員が座っていた。


「ごきげんよう」

「あら、ごきげんよう。その本もういいの?」

「はい、ありがとうございました」

礼を言い本を返す。

「はい、確かに。え〜と福沢祐巳さんと言うのね」

処理をする為PCで名前を確認し、聞いてきた。

「はい」

「私は蟹名静。よろしくね」

「こちらこそよろしくお願いします」

「前から祐巳さんに興味があったのよ」

「私にですか?」

「そう。祐巳さんは聖さまや栞さんと仲がいいみたいだから」

「あ〜、それはですね・・・」


祐巳は簡単に説明をした。
栞とは従姉妹であること、聖とはよくお御堂で雑談していることなど。


「そうだったの。最近御2人は姉妹(スール)になったわね」

「そうですね。聖さまがまさか白薔薇の蕾だったとは思いませんでしたけど」

「どうして?」

「だっていつもお御堂に来てましたから」

「ふふ、あの方はよくフラフラなさっていたから」

慈しみを感じさせる顔つきで語る静。
顔つきとその口ぶりから聖のことをよく知っているのが窺える。

「聖さまのことよく見ていますね」

「ええ。ずっと見ていたから」

「えっ」

少し表情に憂愁の影が差した気がした

「中等部の頃から聖さまのことを見てたの」

「・・・」

「ふふ。ごめんなさいね、なんだか重い感じになっちゃったわね」

表情は笑っているが心は笑っていない気がした。

「静さまは・・・」

「うん?」

「静さまは聖さまの隣に立とうとは思わなかったのですか?」

「えっ・・・」

祐巳の質問に少し驚いている。祐巳自身なぜこのような質問をしたのか分からなかった。
ただ無意識に質問をしていた。

「あっ、ごめんなさい。変なこと聞いてしまって」

「いいのよ。そうね、聖さまの隣か・・・。考えたことも無かったわ」

「今から立とうとは思わないのですか?」

「今は栞さんがいるから。それにね・・・」

「?」

「今の聖さまは私の知っている聖さまではないのよ」

「どういうことですか?」

「あの方は変わられた。とても良い方向に。自然な笑顔で笑っているの」

「私が知っている聖さまは今の聖さまなので違いが判りません」

「昔はほとんど笑わなかったのよ、あの方」

「聖さまがですか?」

「ええ。表情には少し憂いがあって、飄々として群れなかった。いつも一人で行動してたの」

「へ〜。意外です」

聖の昔を聞いて素直に驚いている祐巳だった。

「そんな人だったから惹かれたのかしら」

「う〜ん、ダメな子ほど可愛い的な?」

「あはは!祐巳さんそれは言い過ぎ!!」

ここが図書館であることも忘れ笑う静。シリアスな雰囲気はどこかに飛んで行った。
幸い朝が早かったので利用者が居らず事なきを得た。

「は〜ようやく収まったわ。久しぶりに本気で笑ったわ」

ようやく笑いを収め、祐巳を見た。

「祐巳さんは面白いわね。最高よ。もっと興味が湧いてきちゃった」

「う〜ん、褒められている気がしないのは気のせいでしょうか?」

「褒めているわ。今度は祐巳さんを追いかけてみようかしら」

「え〜。私を追いかけても面白くもありませんよ」

「ふふふ、面白くなりそう・・・っと、利用者が来たわね。少し避けてもらえる?」

「あっ、はい」

静に言われ横へ退く祐巳。するとその祐巳に知った声が掛けられた。

「祐巳さま?」

「ふぇ?」

振り返ると見事な縦ロールを持った少女が立っていた。

「あれ?瞳子ちゃんだ、ごきげんよう」

「ごきげんよう、祐巳さま」

どうやら瞳子も本を返しにきたようだ。

「あら、祐巳さんの知り合いだったの?」

「はい、瞳子ちゃんですよ」

「松平瞳子です」

「蟹名静よ」

2人の自己紹介が終わり瞳子が祐巳の方を向く。

「またですか祐巳さま、わざとやってませんか?」

「あはは、今回はそうなんだ〜。ばれちゃった」

少し舌を出し悪戯がばれた子供のような表情をした。

「こ、今度からは気を付けてください!」

祐巳の顔を見つつ何故か照れながら怒る瞳子であった。

「それにしても祐巳さまは静さまと知り合いだったのですね」

「ふぇ?違うよ〜。さっき自己紹介したところだよ。それまでは図書委員さんと中等部の生徒の関係だよ」

「ふふ、祐巳さんはすごく面白いのよ。興味が湧いてきてね」

「ああ、言いたいことは凄くわかります」

納得したような顔でうなずく瞳子。

「え〜。私はいたって普通だよ〜」

「祐巳さんが普通・・・」

「祐巳さまが普通ですか・・・」

2人は揃って否定的につぶやいた。

「うぅ・・・。2人がいじめる・・・」

それには祐巳も項垂れた。心なしかツインテールも元気がなさそうに見える。
そんな祐巳を尻目に静と瞳子が喋りだした。

「そう言えば静さま今度のミサでは歌われるのですか?」

「ええ、歌う予定よ」

「楽しみにしてますね」

「静さまは合唱部なのですか?」

「ええ、そうよ」

「祐巳さま・・・」

素早い復活を遂げた祐巳だが今度は瞳子に変なものを見る目で見られた。

「どうしたの?瞳子ちゃん」

「静さまのことご存じないのですか?」

「・・・ちょっとお茶目な図書委員さん?」

少しだけ間がありその間に導きだした答えがそれだった。

「はぁ〜」

「なんかすごい溜息を吐かれた」

「当たり前です。静さまはリリアンの歌姫の異名を持つ方なんですよ」

「へぇ〜、そうなんだ。知らなかった」

「祐巳さま本当にリリアン生なのですか?」

「もちろんだよ。幼稚舎から通うチャキチャキのリリアンっ子だよ」

「それで学園では薔薇さまの次に有名な静さまを知らないのは逆にすごいですね」

「だって生活に支障ないし・・・」

だんだんと祐巳の声が小さくなっていく。

「はぁ。まあ祐巳さまらしいと言えば祐巳さまらしいのですかね」

勝手に納得した瞳子だった。


そうこう話し込んでいるうちに利用者の姿がチラホラ見えはじめた。


「さて、そろそろ真面目に働きますか」

「お仕事頑張ってください」

「ええ、ありがと。2人ともまた遊びにきてね」

「はい、またきます」

「それじゃあ、ごきげんよう」

「「ごきげんよう」」


瞳子の本を渡してから静と別れ2人で中等部校舎へと向かう。
その道中

「静さまは有名人だったんだね〜」

「ええ、そうです。あの方の歌声は人に感動を与える力を持っています」

「ふぇ〜、すごいんだね。天賦の才ってあるんだね」

「それもありますがあの方はそれ以上に努力もされていると聞き及んでます」

「ふ〜ん。じゃあ、瞳子ちゃんと一緒だね」

「は、はぁ!?私ですか!?」

いきなり自分に話をふられ動揺する瞳子だった。

「うん。素人目だけど瞳子ちゃんの練習を見ててそう思うよ。
才能があると思うしそれ以上に努力もしてるし」

「い、いきなり褒めないでください。対応に困ります!」

怒ったように言いつつも頬を染めそれと態度から照れているだけだと分かる

「ふふふ、瞳子ちゃんは頑張っているもんね〜」

そんな瞳子を可愛いなと思い、瞳子の頭に手を置き撫でた。

「な、な、な、な・・・」

「うん?」

「何をするのですか!?」

顔を真っ赤にして抗議の声を上げた。

「いいじゃん、ちょっとぐらい」

「だめです!こんな場所で」

「じゃあ別の場所だったらいいの?」

「まあ、それなら・・・。って、どこでもだめです!」

「今、肯定したよね?」

「してません」

一瞬で表情を引き締める瞳子。このあたりは流石だ。

「したよ〜」

「してません」


そんな会話を校舎に着くまで続けていた。
傍目には仲の良い姉妹(スール)に見えていた。
それを知らないのは当人達だけだったりする。


===================================
[あとがき]
祐巳と静の出会いでした。
そして順調にデレへと突き進みつつある瞳子でした。
久しぶりの更新になりました。
実はYahoo!モバゲーの大航海時代Xを再開してそちらに集中してました。
久しぶりに航海すると面白くやめられませんでしたm(_ _)m


(コメント)
柚子 >面白く読ませてもらいました!(No.77401 2016-10-02 05:02:45)

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